206球目 体が思うように動かない

 雨上がりのせいで、球場内は湿気が高めだ。さらに、皆が太ったせいで、ベンチが狭苦しくて暑すぎる。サウナよりヤバイ。



「1番セカンド宅部やかべ君!」


「は~い」



 宅部やかべさんはけだるそうな返事をして、打席へ向かう。バットスイングも鈍く、浜甲はまこう安打製造機ヒットメーカーの面影がない。



 相手投手の豊武とよたけは、小麦色の肌、束ねた黒髪、面長フェイス、長いまつげ、細マッチョな体型で、獣化していなくても馬獣人とわかる。



 キャッチャーの戸神とがみは、ひな人形のような白肌、スイカの巨乳、赤ん坊みたく丸い体型で、恐らく牛獣人だろう。



 馬牛女子バッテリーは、宅部やかべさんをどう攻めるのか。



 豊武とよたけはセット・ポジションから、地面スレスレのアンダースローでボールをリリースする。



「ストラ―イクッ!」



 スピード自体は、1回戦の木津きづとあまり変わらないように見える。しかし、慣れない軌道きどうでくるボールは打ちにくい。一応、ピッチャー太郎02を下から投げさせて練習したが、機械と人とではボールのキレが違う。



とよちゃん、ナイスボールぅ❤」

 


 戸神とがみは甘ったるい声を出して、豊武とよたけに返球する。声優デビュー出来そうなぐらい、キュートなヴォイスだ。



 豊武とよたけは鼻の穴を大きくして、2球目を投げた。



 宅部やかべさんのバットがボールをとらえる。打球は1・2塁間を抜け、ない。



 セカンドの大縞おおしまが飛びついて捕り、ファーストへ投げた。宅部やかべさんの打球にいつもの勢いがない。



 しかし、仮にライト前へ打球が飛んでも、宅部やかべさんはアウトになっていただろう。先輩はファーストとホームの真ん中で、ぜぇぜぇとうつむいていたから。



(続く)

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