200球目 コールドゲームの幕切れは切ない

 宅部やかべさんの打球がライト前にポトリと落ちる。



 3塁ランナーの烏丸からすまさんはホームイン。さらに、2塁ランナーの千井田ちいださんが快足を飛ばす。



「バックホーム!」



 キャッチャーの声もむなしく、竜堀たつぼりが投げようとした瞬間、チーターの足がホームを踏んだ。



「セーフ! ゲームセット!」



 5点ビハインドで始まったが、8回の猛攻撃で逆転し、コールド勝ちできた。浜甲はまこう打線は強い!



 さぁ、試合終了のあいさつだ。俺は木津きづに例の件を尋ねてみる。



「今日の試合、よくボールが飛ぶインチキバット使ってましたよね?」



 木津きづは深呼吸をしてから、悟りを開いたように静かな声で喋る。



「ようわかったね。そんなセコいことしたから、コールドま……」



 隣の神沼かみぬまにこづかれて、木津きづは口をつぐむ。神沼かみぬまは涙をふいて、俺達に向かって叫ぶ。



「どんどん勝てや、浜甲はまこう! 実質的に八木やぎ学園が準優勝やったと言われるぐらい、勝てぇ!」


「イエス! ウィン&ウィンします」


「あたし達、甲子園行くもん。負けてられへんわ」


「君達ぃ、そろそろあいさつしなさい!」



 球審にうながされて、最後のあいさつをかわす。



「ありがとうございましたっ!」



 1回戦、浜甲はまこう学園は八木やぎ学園を13-6(8回コールド)で破った。次の相手は六甲山ろっこうさん牧場高校だ。次はもっと楽な試合になりますように……。



八木学園500 001 00……6

浜甲学園101 021 08×…13



(3回裏終了)

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