194球目 弱気の虫はもういらない

 俺は8回まで投げ、八木やぎ学園を4安打3四球フォアボール10奪三振だつさんしんに抑えている。阪体はんたい大戦よりも絶好調だ。それなのに、6点も取られている。



 残る攻撃は2イニング。1点差なら追いつけるはずだが、木津きづの投球と八木やぎ学園の守りにのらりくらりとかわされて、俺達は弱気になっていた。



「この回が最後と思って! 逆転しなさい!」



 グル監の言葉は熱を帯びている。不安で伏し目がちだった皆の顔が、引き締まってまっすぐ見すえるように変わる。



火星ひぼし君には悪いけど代打出すね。本賀ほんがさんゴー!」


「はいっ!」



 ストレートに滅法めっぽう強い本賀ほんがさんは、背筋を伸ばし堂々とした姿勢で打席に入る。



「あと6人や、木津きづ!」


「おう! 俺らの夏は終わらんでー」



 木津きづ神沼かみぬまのバッテリーの呼吸が合ってきた。



 ノリノリの木津きづは、ストレートを外角低めアウトロー一杯に決める。本賀ほんがさんは打ちに行かない。



 2球目は真逆の内角高めインハイに。これを本賀ほんがさんは待っていた。



 差し込まれても振りぬき、センター前へ運ぶ。ノーアウトのランナーだ!



千井田ちいださんゴー!」


「任せて、グル監!」



 千井田ちいださんがチーターに変身して、1塁へ向かう。



 同点確実の黄金チーターランナーのお出ましだ。



(続く)

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