193球目 宅部の打棒が止まらない

 6回裏、2点差を追う浜甲はまこう学園は、打順良く1番の宅部やかべさんからだ。



「あいつムカつく」



 宅部やかべさんは木津きづを見てボソッとつぶやく。騒々しいバカが嫌いだからな、宅部やかべさんて。



 自らの足で点を取った木津きづ上機嫌じょうきげんで練習球を投げる。



「しっかり守ってくれよー、みんな!」


「おー!」


「はい!」



 北矢きたや大路おおじだけが、木津きづキャプテンに応える。他のメンバーは石像のように固まっていたり、グローブの中を見たりしている。



 宅部やかべさんは、一番緊張していそうなサードの笹井ささいの方へ狙い打った。笹井ささいのグローブをはじく内野安打になる。



 3安打猛打もうだ賞の宅部やかべさんの勢いは止まらない。



 ノーサインで2盗に成功し、真池まいけさんの送りバントで3塁へ進む。さらに津灯つとうのセンターフライで、一気にホームを踏んだ。



水宮みずみや、続けよ」


「はいっ!」



 宅部やかべさんとハイタッチをかわす。先輩のパワーを受け取ったぜ。



「センターバック、バック!」



 またもや超後退シフトを敷いてきた。どんなシフトを敷こうが、その上をいくホームランなら関係ないね。



 初球はワンバウンドのボール。

 


 2球目にど真ん中キタキタキター!! 打つべし!



 打球は弾丸ライナーでセンターへ。宅部やかべさんばりの俊足を飛ばす。しかし、センター近森ちかもりが上に伸ばしたグローブの中へ、ボールが吸い込まれてしまった。



 普通のシフトなら、ツーベースヒットなのに……。



(続く)

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