189球目 片手打ちはオススメしない

 山科やましなさんの構えは神主かんぬし打法に似ている。打ちそうなオーラがビンビン出ている。



「どんな構えをしようが、俺のハンズキャノンは打てないッ!!」



 ハンズキャノンのボール発射! 



 山科やましなさんは目にも止まらぬ速さでバットを後ろに引き、ヒッティング!


 

 打球はピッチャーの真正面へ。



「うひゃあ!」



 ボールは木津きづのグローブに入ったが、勢いが止まらず、ネットを突き破って二塁の前に落ちた。ピッチャー強襲きょうしゅうヒットだ。



「みんなの応援のおかげで打てたよ。ありがとー」



 山科やましなさんが1塁側スタンドに手を振れば、女性の黄色い歓声が起こる。まるでアイドルのコンサート会場だ。



「よーし! 俺様も続くでー!」



 番馬ばんばさんが打席に入れば、男の野太い歓声が集まる。



 彼は赤鬼化して、バットを左手一本で振りぬく。両手で振った時よりスイングスピードが速い。



「さぁ来い! 何とかキャノン!」


「ええかげん覚えてほしいなぁ。何とかキャノンやなくて、ハ・ン・ズ・キャノン!!」



 木津きづは赤鬼の鬼迫に押されることなく、ハンズキャノンをぶっ放す。



「ぬおおおおおおお!」


「ストライク!」



 番馬ばんばさんのバットとボールは1mほど離れている。



「うわっ!」



 スイングの風圧でグラウンドの砂がまき上がって、木津きづの顔にかかる。当たればホームランだ。



「おっ、驚いたなぁ。しかし、俺のボールが片手で当てられてなるものかぁ!」



 2球目はしっかりため込んでから、放たれた。



「ぬぐあああああああ!」



 グラウンドに響くは豪快な叫び声とバットの轟音ごうおん



 打球はグングン伸びてレフト方向へ。



 これは同点ホームランになる。



(続く)

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