190球目 追いつけそうで追いつけない

 木津きづは瞬時にハンズキャノンの中にグローブを入れて、レフト上空目がけて飛ばした。まさか、ボールをグローブにぶつけて落とすつもりか?



 グローブは大砲の勢いで飛び、ボールに当たった。ボールとグローブがレフトの木村の前へ落下していく。



「フェア! バッターランナー、テイクスリーベース!」



 球審きゅうしんが3塁ベースを指差す。



「え? ホームラン違うんか?」


「野手が帽子やグローブでボールを落としたら、3塁打スリーベースヒットになるってルールがあるんや」



 神沼かみぬま番馬ばんばさんに説明してくれる。



「そ、そんな、俺様の公式戦初ホームランが……」



 高々と飛ぶ打球を正確に当てて落とすとは、恐るべしハンズキャノンの威力とコントロール……。



 同点にならなかったが、2死3塁で、まだまだチャンスは続く。



 しかし、烏丸からすま火星ひぼしの連続四球フォアボールの後、東代とうだいが三振に倒れてしまった。



 ※※※



 リードを守りぬいた八木やぎ学園ナインは、疲れた表情を見せてベンチに戻る。



木津きづキャプテン、さっきのグローブ投げ、マジ半パなかったです! オレ、感動しました!」



 大路おおじが目をうるませて木津きづを称える。



「5-4、残り4イニングか。木津きづ、逃げ切れそうか?」



 公田きみだ監督は盛んにヒゲをいじくり回している。



「1点差ぁやと勝てませんよ。点もっと取らな」



 木津きづはバットケースから自分のインチキバットを取って、水宮みずみや投手をにらみつける。



(続く)

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