188球目 バットは竹刀のように振るんじゃない

 時を戻そう、5回裏が終わり、浜甲はまこうナインがベンチに帰ったところに。



 山科やましなは目を輝かせながら、東代とうだいに質問をぶつける。



「ミスター・トーダイ! IQ156の君やったら、ハンズキャノン攻略法が浮かぶはず。僕に教えてくれるかい?」


「ウェル。ハンズキャノンは発射してから、0.4セコンドでホームに来ます。バッターのスイングスピードのアベレージは0.58セコンドです。これでは、フォーエバー永遠にノーヒットです」



 東代とうだいは三振を告げる球審のポーズを真似る。



「そこで、バックスイングの分をショートカットします。バットをスリープ、寝かせてスイングします」


「なーる。しかし、それやと、バットに当たってもボテボテのゴロになりそう」



 山科やましなが首をひねっていると、ベンチ奥の鉄家てつげ先生の奇妙な行動が目に入る。



「フンッ! フンッ! フンッ!」



 彼はプラスチックの青バットを剣道の竹刀しないのように、一心不乱に振っている。



「ちょっと、鉄家てつげ先生。落ち着いて下さい!」



 グル監に注意された鉄家てつげはバットを下ろし、手ぬぐいで額の汗をふく。



「すみませんね。何か無性に体を動かしたくなりまして」



 山科やましなは一連の動作を見て、目の中にひらめきランプを灯す。



 ※※※



 そして、2死2塁の場面で、山科やましなに打席が回る。彼はバットを竹刀しないのように縦に振り、へそ辺りでおろした所で止める。



「さぁ、投げたまえ」



 山科やましな木津きづに向かって、星が出るウインクをする。



(続く)

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