187球目 ハンズキャノンの吸引力は変わらない
5回表の
グル監のサインは
「ここで使うかぁ、ハンズキャノン!」
うわぁ。俺の打席でタイミングの取り辛いハンズキャノンかよ。
「タイム、タイム!
グル監に呼び出されて、ベンチへ向かう。
「今から送りバントをピッチャー前に転がしてくれる?」
「ピッチャー前? 下手したらダブられますよ?」
「よく聞いて。あの筒の中にボールを入れるんは時間かかる。ということは、打球の処理も戸惑うと思わない?」
なるほど。
「わかりました。きっちり“バント”決めてきますよ」
俺は打席に入り、バントの構えをする。ハンズキャノン時はストレートしか投げないようだから、バントで当てる分はカンタンだ。
まっすぐ転がしてピッチャー前へ。さぁ、打球の処理をゆっくりしていってね。
ところが、木津のハンズキャノンは、掃除機のようにボールを吸って、そのまま1塁へ発射した。
「アウト!」
「そんな使い方あんのかよ……」
呆然とする俺を見て、
この回も点が取れるか怪しくなってきた。
(続く)
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