185球目 ハンズキャノンのタイミングがつかめない

 木津きづの超能力は、右手を鉄砲の筒に変え、その中にボールを入れる“ハンズキャノン手砲”だ。



「フン! それがどないしたっちゅうねん」



 番馬ばんばさんがお腹をへっこませ、筋骨隆々の赤鬼と化す。



 木津きづはセット・ポジションのまま、投げるタイミングを計っている。左手で筒を持ち上げ、穴をミットに向けている。まるで、獲物に銃口を向ける猟師りょうしのようだ。



 いつ投げるか、いつ、ボールが発射!?



「ストライク!」


「えっ? チョー待て! 足上げんと投げるのはアカンやろ?」


「セーフだ。特例により認められている」



 球審は番馬ばんばさんの抗議を冷たくはねのける。



「ハァ? どんな特例やねん?」


「それに関しては、俺から説明しよう」



 木津きづ蛮族ばんぞくを見下す古代ローマ人顔で説明し始める。



「このハンズキャノンで左足を上げると、土台が不安定になり、あらぬ方向へボールが飛んでしまう。何せ、このハンズキャノンの時速140キロ、小鳥を撃ち落としたこともある。そこで、高野連と相談したところ、足を上げずに投げてもOKをもらったってワケ」


「小鳥じゃなくて、セミやろ」



 神沼かみぬまがふてくされた顔でボソッと言う。



 足を上げずに投げられると、タイミングがつかめない。ハンズキャノンからボールが出た瞬間に振りに行けば、空振りか振り遅れになってしまう。



「何とかキャノン、来い!」


「言われなくとも、発射したる!」



 今度はセット・ポジションになったと同時に発射する。番馬ばんばさんは打ちに行ったが、振り遅れてどん詰まりのセカンドフライになった。



 続く烏丸からすまさんも三振に倒れ、またもや1点止まりだった。



(続く)

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