183球目 インチキバットに打たせない

 また外野に飛ばされた。あの打球は、弱小校の9番打者じゃない。トラ塩に匹敵するパワーだ。



「ミスター・ミズミヤ、グッドニュースです」



 東代とうだいがテーマパークに来たような笑顔を見せる。



「彼らのバットはパワーアップするトリックが隠されています」


「パワーアップ? じゃあ、今までの打球は、奴らの実力じゃなくて、バットの力ってことか?」


「イエス! そのエビデンス証拠、彼らはストレートをヒッティングできても、チェンジアップやスライダーに全くタイミングが合っていません」



 何て卑怯ひきょうな奴らだ。俺の右拳に力が入る。



「ですから、ストレートは明かなボール球、チェンジアップやスライダーでカウントを整えていきましょう」


「OK。もう、あいつらには打たせん」



 東代とうだいの指示通り、ストライクゾーンにチェンジアップやスライダーを集める。奴らのバットは空を切り、当たっても貧弱な打球になる。



 2回、3回と三者凡退に抑えて、3回裏の攻撃に移る。



※※※



 3回裏、神沼かみぬまはマウンドの木津きづの元へ駆け寄る。



「あいつら、俺らのインチキバット見破ったんと違うか?」



 神沼かみぬまは注射前みたく不安な顔を浮かべる。



「かもな。けど、関係あらへん。俺のハンズキャノンの力で、このリードを守り切ったる!!」



 木津きづの右腕が天に向かって伸びる。彼の腕のところどころが、銀メッキで輝いている。



(続く)

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