178球目 魔球は1日で覚えられない

「握りをチェックしましょう」



 東代とうだいが俺のグローブの中をのぞきこむ。



 中指と人差し指でボールを挟んで、親指と人差し指でOKに近い形を作る。



 これが、メジャーリーガーがよく使う“バルカンチェンジ”だ。



「これ投げるの、五回戦以降だと思ってたけどな」


「今負ければ、ネクストゲームはありません!」



 いつも冷静な東代とうだいが、珍しく語気を荒げる。



「ああ、わかってるよ」



 負けたら廃部はいぶ、皆と野球が出来なくなる。出し惜しみせずに、全力を出さなければ。



 東代とうだいのサインはインコースにバルカンチェンジだ。覚えたての変化球をバッター付近に投げさせるなんて、大胆過ぎるリードだ。



 バルカンチェンジは普通のチェンジアップと同様に、ストレートと見せかけてまっすぐ腕を振る。いつものチェンジアップより速いから、ストレートとカン違いして、打ちにきてくれ!



「ストライク!」



 ボールがバットの下に沈んでくれた。ふうう、めっちゃ神経を使うボールだぜ。



「ナイスボール!」



 東代とうだいが口元をゆるませて、俺にボールを投げる。



 木村は次のバルカンチェンジも空振りで、三球三振に倒れる。



 これでツーアウト。2点止まりで終われそうだ。



(続く)




※水宮君は何の球種を覚えるかクイズ!の正解発表


 正解はバルカンチェンジ(http://henka-kyuu.com/?p=507)でした!


 難易度が高いので、同じチェンジアップ系のサークルチェンジや和田ボールでも正解にしてます。


 ヒントは”見たことのない奇妙な握りの変化球”、アメリカンな東代が薦めてきた点ですかね。今後もこんな感じのクイズあるかもなので、よろしくお願いします!!

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