177球目 ストレートが通用しない

 ホームラン、ツーベースヒットの後、2連続フォアボールの後、1回目の伝令タイムが使われる。伝令にやって来たのは千井田ちいださんだ。



「ボールを低目に集めて、内野でアウトにしろって言うてたやん」


「打たせたら、あたし達が何とかするから」



 女の子達にはげまされて情けねぇ。俺は頭を振って、東代とうだいの顔をよく見る。



「彼らがヒッティングしてるのはストレートです。変化球でカウントを整えましょう」


「OK。もし打たれたら、みんなよろしくな」


「ラジャー」


「うん」


「任せて」


「よっしゃい!」



 皆が元の守備位置に戻って、ゲーム再開だ。



竜掘たつぼり、ホームラン打ってくれぇ!」



 1塁ランナーの木津きづが叫ぶも、竜堀たつぼりはタメ息をついて無視する。



 初球のチェンジアップを見逃しストライク、2球目のスライダーは空振りで、0-2の有利なカウントに。



 ボールになっていいぐらい低目にストレートを投げる。竜堀たつぼりがすくい上げて打てば、山科やましなさんへの平凡なフライになった。



 3塁ランナーは返ってきたが、ワンアウト取れて良かった。



「6番レフト木村君」



 木村は極端なガニまた打法で構える。こいつでゲッツーに取って、裏の攻撃に移りたい。



 初球はインコースにストレート。うわっ、打ってきた。



「ファール!」



 1塁線に切れるファール。ストレートだけガンガン打ってくるな、八木やぎ学園打線は……。



 東代とうだいがタイムを取って、マウンドにやって来る。



「ミスター・ミズミヤ、例のボールを投げましょう」



 もう、あの覚えたてのアレを投げる時が来たのか?



(続く)

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