3回裏 夏大予選スタート! VSインチキバットとハンズキャノン(手砲)の八木学園(1回戦)

174球目 参加するだけじゃ意味がない

 7月10日、プロ野球選手が使うブルーオーシャン神戸球場に、兵庫県内164校の硬式野球部員が集まった。3つの綿雲わたぐもがあるだけの真っ青な空、騒がしいセミの鳴き声、むせかえるような暑さ、いかにも夏本番だ。



「正々堂々と試合することを誓います!」



 伊丹いたみ四校の主将が力強い選手宣誓を行う。満員の観客が温かい拍手を送る。



「あー、もう倒れそう」


「子猫ちゃん、頑張って。あとは退場だけや」



 千井田ちいださんは口を開けて、手をうちわ代わりにして辛そうだ。こんなクソ暑い中、四方八方を人で囲まれたら辛いよな。



「選手、退場!」



 バックスクリーン近くの学校から次々と退場していく。俺達がこの球場に次に来るのは、準々決勝以降だ。



「明日、勝とうね」



 津灯つとうキャプテンが振り向いて、決意を固めた真剣な表情を見せる。俺達は「おう」と、拳を高々とかかげた。



(続く)

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