173球目 合宿が学校なのは味気ない
ついに、明日が兵庫県の夏大予選開会式の日だ。
我が野球部員は、大会期間中は学校で寝泊まりすることになった。
部屋割りは以下のとおりである。
家庭科室……
音楽室……
書道室……
美術部……
長机を後ろへ移し、布団を敷いて寝る準備をする。
「それにしても、教室のメンバーはよく考えられとるね。問題起こしそうな
「赤鬼番長とロックンローラーと同室の
「案外、楽しんどるかもよ。
「あー、確かに。
この前、
「ああいうところが、アメリカンやな。僕も、もっとワールドな男にならんとね」
「外人の女性と付き合うつもりですか?」
「せやな。ブラジルのダンサーやフランスの舞台女優と付き合ってみたいな。グーテンターク、ヴォンジョルノ―」
「グッナイ。お先に寝ます」
「明日は神戸で行進か。僕の雄姿を球場の皆さんにお見せせんと。そろそろ寝よか、
俺は「はい」と返事して、室内の電気を1つずつ消していく。
真っ暗な音楽室では、ベートーベンやモーツァルトなどの音楽家の肖像画が、月光に照らされて妖しく光って怖い。
「明後日が試合か」
この個性豊かな仲間たちと、もっと野球がしたい。俺は精一杯投げぬいて、全力で打って、勝利をつかみたい。
「おやすみなさい」
俺は小声でつぶやき、布団を足にかけて寝始める。明日、兵庫県中の野球部に出会えるから、実に楽しみだな。
(夏大予選まであと1日)
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