172球目 俺だけ成長していない

 浜甲はまこう学園が再結成されて3か月経った。その間に、部員はいちじるしく成長していた。



東代とうだい……変化球を後ろにそらさないようになった。

真池まいけ……バスターでボールを打てるようになった。

宅部やかべ……七色のカーブを意識的に操れるようになった。

番馬ばんば……飛距離が伸びて、バットに当たればツーベース以上だ。

津灯つとう……守備範囲が広がって、レフトやピッチャー付近の打球が捕れるようになった。

烏丸からすま……流し打ちが巧みになる。

山科やましな……センターから送球の安定感が増す。

火星ひぼし……様々な選手のバッティングフォームで打てるようになる。

取塚とりつか……30球限界が、40球に伸びる。

千井田ちいだ……体力がついて、1試合フル出場できるように。試合終盤は、なぜか犬みたいに舌を出す。

本賀ほんが……フライやライナー性の打球を捕れるようになった。



 ざっと挙げただけで、皆はこんなに成長している。



 しかし、エースで4番の俺はどうだろうか。練習試合で3割打ったり、7回を3点ぐらいで抑えたりしているが、成長の実感がない。



 やはり、刈摩かるまのアイアンボールや天塩あまじおのスプリットみたいなウイニングショットがほしい。



 練習後に、東代とうだいに相談してみる。



「新しい変化球、それも魔球みたいなの覚えたいんだけど、何がいいかなぁ」



 東代とうだいはスマホで変化球の握りを画像検索する。



「ナックルはどうですか?」



 ナックルは極めて無回転に近いゆるいボールだ。空中でかなり揺れ、キャッチャーが捕りにくい。



「ランナーいる時のハンドタイプのミットじゃ捕れないだろ。ダメ」


「ウェル、それでは、シンカーはどうですか?」



 シンカーは、サイドやアンダースローの投手が投げやすいボールだ。右打者から逃げるように曲がる。



「ダメダメ。プロでも、あんまり投げてる人が少ないやつがいいなぁ」


「アハーン。それでは、このボールはどうですか?」



 東代とうだいのスマホ画像には、見たことのない奇妙な握りの変化球が載っていた。



(夏大予選まであと3日)



水宮みずみや君は何の球種を覚えるかクイズ!


応援コメントなどで答えて下さい。

正解した人には『ゲームセットは聞こえない』本編の出場権が与えられます。

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