171球目 追試は受けたくない

 先週の内に、全ての期末試験の答案が返却された。さらに、今週はテストの点に、平常点(出席回数やノート点、授業中の発言など)が加味された成績表が配られる。



 最終成績で30点以下の科目があれば、追試を受けなければいけない。幸いにも、俺は英語が38点、それ以外の科目が60点以上で追試がなかった。



 野球部員では、番馬ばんばさんが数学・英語・日本史の追試、真池まいけさんが音楽以外の全科目の追試になってしまった。



 もし、来週の追試も不合格になれば、7月末から8月いっぱい補習だ。予選に出場できなくなる。レギュラー2人を欠くと辛い。



 早速、2人は家庭科室で追試対策の勉強をする。東代とうだい指導の下、様々な科目の要点を勉強する。俺と津灯つとうはキャッチボールしながら観察していた。しかし――。



「自慢やないが、俺様は2年連続で補習受けとる」


「俺も去年は補習で、ロックンロールサマーが消えてもうた」



 2人とも浜甲はまこうに受かったのが奇跡と思えるぐらい、絶望的な頭脳だった。さすがの東代とうだい教授もさじを投げる。



「オーノー! これでは、アディッショナル・イグザム追試にパスできませーん」


「もうさぁ、カンニングやっちゃう?」



 津灯つとうが何気なく言うと、東代とうだいは指をパチンと鳴らして笑顔を見せる。



「グッド。ミスター・カラスマのスキルを使って、カンニングしましょう」


「あの鳥と入れ替わるアレか」



 トラ塩に襲われそうになった(https://kakuyomu.jp/works/1177354054895930927/episodes/1177354054911049793)のを思い出して、鳥肌が立ってしまう。



「イエス。クラスルームの天井から私が解き、その答えを外のミスター・ミズミヤかミス・ツトーが鳴き声で伝えます。ハマコーのテストはナンバーで答えるので、カンニングしやすいです」


「面白そう! やろ、やろ!」



 津灯つとうはウサギのように跳びはねてノリノリだ。



「頼む! 俺様を助けてくれ!」


「ロックンロールなベースボールサマーを送りたいから、マジでよろしくお願いします! 次は、ちゃんと勉強するから」



 クモの糸をつかむ罪人のように、2人は必死の形相でお願いしてくる。さすがに断り切れない。



「うーん。しゃあないなぁ」



 追試は来週の月~金曜に行われる。はたして、番馬ばんばさんと真池まいけさんはカンニングで合格できるだろうか?



(夏大予選まであと4日)

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