162球目 偵察がバレたらいけない(摩耶高校)

 番馬ばんば烏丸からすまは山頂の摩耶まや高校を目指している。



「ハァハァ。何で、山、登らな、アカンねん。ロープウェイ、ないんかい!」


番馬ばんば、あと少しだよ。ホラ、看板が見えてきた」



 木の看板はボロボロで、摩耶まやの文字が林耳に変わっている。



 自宅が山中にある烏丸からすまは平気だが、番馬ばんばにとっては山登りの急斜面が地獄の入り口に見えてきた。



「この先に学校が、えっ? あれ、学校?」



 2人の100m先に、ツタに覆われた古びた洋館が建っている。窓ガラスが割れ、一部の壁が腐って、廃墟はいきょのように見える。



「うっ。寒い寒い」


「何や、カラス。こんなクソ暑いのに」


「霊気があるんや、霊気。ここめっちゃヤバイカァ!」



 烏丸からすまが泣けば、森のカラスがギャアギャア騒いで飛び立った。



 ***



 2人はしげみの中に隠れて偵察する。摩耶まや高校のグラウンドでは、生気のない野球部員が練習している。声かけは全くなく、動きものろい。髪が異常に長い女性部員が、木陰から部員達を見守っている。



「あー。こんなん見てるとイライラするー。俺様がかつ入れたろか」



 番馬ばんばは怒りで顔が真っ赤になる。



「早く帰ろう。ここはヤバいから」



 烏丸からすまは青ざめた顔で震え続ける。




高校名:まや高校

レビュー者:番馬長兵行

投手力:1

打撃力:1

守備力:1

総評:みんなとろい、とろい。ケンカやったら、すぐ死ぬで、あいつら。

(原文ママ)




高校名:摩耶高校

レビュー者:烏丸天飛

投手力:2

打撃力:1

守備力:2

総評:とにかく暗いチーム。部員が幽霊か人間かわからない。ピッチャーはゆるいボールを投げる。バッターのスイングはハエが止まりそう。守りは後ろにボールをそらさないけど、とってもおそい。帰ってから38度の熱が出たから、もう二度と行きたない。



(夏大予選まであと12日)

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