160球目 偵察レビューを長くしない

 高校生活初の期末試験は何とか乗り切った、と思う。



 英語以外は自己採点で70点以上(世界史は95点!)あったから、赤点はないと思う。



 土曜日の終礼後に、野球部は家庭科室に集められた。皆は試験から解放されて、ピクニック前のようにウキウキしていた。



「突然ですが、明日は皆さんに偵察ていさつしてもらうわ」


偵察ていさつ? 皆で八木やぎ学園に行くんですか?」



 津灯の質問に対して、グル監はチッチッチッと人差し指を立てて振る。



「それも行くけど、二人一組で色んな高校に行ってもらうことにしたんよ。同じブロックの9校にね」



 4回戦までに対戦する可能性のある9校のうち6校は、ここから1時間以上離れた場所にある。そこで、日曜丸一日使い、二人一組で偵察しようってワケらしい。



「偵察したら、こんな感じにレビュー書いてね」



高校名:浜甲学園

レビュー者:飯卯舞

投手力:6

打撃力:4

守備力:8

総評:エースピッチャーは140キロ近く投げるが、特筆すべき変化球はない。長打を狙える打者が数人いるが、全体的に小粒の印象。外野の守備が堅く、フェンス際の長打が全部捕られてしまう。



「凄い変化球がなくて悪うございました」



 俺は顔をフグみたいにふくらませて言う。



「み、水宮みずみや君、これはレビュー例やから。ちょっと脚色きゃくしょくしただけよ」



 慌ててフォローするグル監を見て皆が笑う。明日の練習が無くなったからヨシとするかー。



(夏大予選まであと13日)

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