159球目 ダブルデートは恥ずかしくない

 来週、いや明日から期末試験だというのい、俺は今デートをしている。烏丸からすまさんが津灯つとうと2人きりは緊張するので、俺と本賀ほんがさんを誘ってダブルデートにしたのだ。



 長時間のデートは勉強に支障をきたすというワケで、1時間ほどカフェでおしゃべりすることになった。



「俺っちのバット使っての内野安打、感動したでー」


「いやいや、先輩のヒットの方が良かったですよ」



 津灯つとう烏丸からすまさんはカフェに来てから、ずっと前の試合の話をしている。津灯つとう浜甲はまこう学園のユニフォーム、烏丸からすまさんは袈裟けさを着ていて、デートを仮装大会と勘違いしているのかもしれない。



 俺と本賀ほんがの方は、できるだけ野球以外の話題にしている。どっちも常識の範囲内の私服だ。



「最近どんな本が面白かった?」


「えっと、『女性教師がマンティコア化したら学校中がモンスターだらけに』(https://kakuyomu.jp/works/1177354054921786938)かなー」


「あっ、マンチ先生は読んだことある。と言っても、漫画の方だけど。悪いモンスター倒しても、みんなから臭いと言われるの笑えるよね」


「そうそう。元は可愛い顔やのにねー」


「あれ? 麻里まりちゃんとスーちゃんやん」



 入口の方を見れば、ヒョウ柄服の千井田ちいださん、スタジャンの天塩あまじお、着物の辺田へんださん、青いブラウスの女性の4人組が立っていた。天塩あまじおの体は少しやせたが、元気そうな感じだ。元に戻って良かったな。



「こんにちはー。チーさんもデートですか?」


「そうやん。天塩あまじお君に誘われちゃって」



 のろけ顔の千井田ちいださんが天塩あまじおを指差して笑う。



辺田へんださんが女の子誘えってうるさいから」



 眉をひそめる天塩あまじお辺田へんだを指差す。



「ピヒヒヒヒ。2人やと心細くてなぁ」



 烏丸からすまさんと辺田へんださんは獣化度が違っても、同じ鳥頭ということか。試合終了後に辺田へんださんが千井田ちいださんとLANEレイン交換してたのは、この日のためだったのね。



浜甲はまこうの皆さん、とっても凄かったですね。私の中でベストゲームだったと思います!」



 辺田へんださんの彼女(当日のウグイス嬢)が目を輝かせて言う。



 俺もよく阪体大はんたいだい打線を3点で抑えられたもんだ。全てはIQ156東代のリードとグル監が組んだ練習試合のおかげだ。



天塩あまじお君が筋肉モリモリになった時は、負けるかもと思ったけど。あっ、天塩あまじお君、元に戻れて良かったね!」


「おおきに。校長からもらった茶ぁに、瞬間筋肉増強剤ぞうきょうざいが入ってたらしくて、副作用でバター状に溶けてもうた。心配かけてごめんな」



 オフの天塩あまじおは甘えるネコのように大きく丸い瞳だ。試合中の殺気だった奴とは別人に思える。



「このメンバーで集まったら、何かカラオケ行きたなってきたやん」


「いいねぇー。行こう行こう」


「俺っちの美声を披露するかー」


「えっ、ちょっと、テスト前日……」


「帰って勉強しないと……」



 俺と本賀ほんがが拒否表明しても、いやおうがなしにパリピビースト(千井田・辺田・烏丸)はカラオケに引っ張る。



 津灯つとう天塩あまじおも乗っかり、しかたなく俺と本賀ほんがもついて行った。



 かくして、日曜日はダブルダブルデートで1日中遊びほうけてしまった。



(夏大予選まであと19日)

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