157球目 対戦相手が強くない

 6月17日、夏大の兵庫県予選の抽選会が開催された。監督とキャプテンが神戸の抽選会場に向かい、俺達はプールで結果待ちだ。



阪体はんたい大に勝ったから、正直どこが相手でも負ける気せぇへんわ」



 山科やましなさんが芸能人ばりの真っ白な歯を見せて笑う。



「でも、俺達はノーシードだから、8試合勝たないといけないし、2回戦で良徳りょうとくと当たる可能性がありますよ」



 冷静に考えたら、クソ暑い3週間で8試合戦うなんて、クレイジーな日程だ。負けたら終わりのプレッシャーもあるから、楽に勝てる試合はない。



刈摩かるまのボールなんか、俺様が宇宙の果てまで飛ばしたるわ!」



 番馬ばんばさんは力こぶを見せて声高に宣言する。天塩あまじおに対してオール三振だった彼は、有言実行できるかしらん。



「お待たせ―。対戦相手決まったよー」



 津灯つとうが花火のようにはじける笑顔で帰ってくる。対照的に、グル監は仏像のように神妙な面持ちだ。組み合わせが良いか悪いか、判断できん。



「対戦相手の組み合わせ、ホワイトボードに書くわね」



 グル監が細く丁寧な校名を縦に並べ、トーナメント表を完成させる。



 4回戦までの組み合わせは、以下の通りになった。

  ↓


https://pbs.twimg.com/media/EgA5FxlVoAAgZiO?format=jpg&name=medium



 俺達のブロックはシード校の赤穂あこう大志だいし以外、強豪校が見当たらない。刈摩かるま良徳りょうとく学園やポートタウン大付属と当たらなくて良かったぁ。



「どの試合も決勝戦やと思って、戦わないとアカンよ」



 真面目なグル監に対して、俺達は気の抜けた返事をする。シード校とぶつかり始める5回戦以降が、勝負になるだろう。なぁんて、タカをくくっていた。



(夏大予選まであと23日)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る