155球目 理事長夫人はあきらめない

 寅吉とらよし校長と喜田きだ教頭は柳生やぎゅうアンナの顔色をうかがう。浜甲はまこう学園が勝ったことで怒りに狂わないかどうか。



「アハハハハハハハハハハ! あいつら、中々やるじゃない」



 アンナはストッパーが外れたように大笑いする。校長・教頭コンビが安心したのも束の間、アンナの容赦なき暴力が襲う。



「ア、アアア、グウウウ」


「ひっ、ひえええ」



 アンナのひざ蹴りが校長の股間に直撃。続いて、右手で教頭のスーツのボタンを引きちぎる。校長はその場でうずくまり、教頭は床に散らばったボタンを慌てて拾う。



「夏の予選出場おめでとう」



 彼女は引きつった笑みを浮かべ、スマホを起動する。Tbotterツボッターの裏垢で、「浜甲野球部が阪神体育大に勝ったよ! すっごーい!」とつぶやく。



「いつでもいつも上手くいくなんて思わないことね」



 彼女は鼻を鳴らして双眼鏡を取り、喜びに満ちた浜甲はまこうナインを見る。



 夏大の予選出場は叶ったものの、浜甲はまこう学園の甲子園出場までの道のりは、果てしなく遠く険しい。



(2回裏終了)

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