137球目 俺に打順が回らないかもしれない

 浜甲はまこう学園の残る攻撃は2回、1点差。



 4月の花丸高校3軍戦と比べたら、俺達は大分強くなっている。逆転できない点差じゃない。



 しかし、天塩あまじおのツーシームは回を増すごとに速くなっている。カットボールやスプリットはキレッキレ。どう攻略したらいいんだ。



刈摩かるま君。天塩あまじお君の攻略方法ある?」


刈摩かるまぁ、お願いやから、教えてやん」



 津灯つとう千井田ちいだコンビにお願いされた刈摩かるまは、あぐらをかいて一休さん(少年時代)のように考え込む。そして、カッと目を見開いて答える。



「ここまできたら、ホームランか三振だね。今の彼を連打でノックアウトするのは、良徳りょうとく打線でも難しいよ」


「そっかー。じゃあ、水宮みずみや君や番馬ばんばさんのホームランで逆転やね」


「俺に打順が回ってきたらの話だけどな」


「あっ! この回は烏丸からすまさんから……」



 8回・9回を3人ずつで片付けられたら、俺がネクストバッターズサークルでゲームセットだ。最悪なことに、烏丸からすまさんから津灯つとうまでで長打が期待できる打者がいない。



刈摩かるまは左投手やから、取塚とりつかと入れ替わったらええやん」


千井田ちいださん、それはさすがに……」


「大丈夫! 俺っちが粘ってフォアボールで出るから!」



 烏丸からすまさんが胸を張って言う。今日の彼は覇気が満ちている。



烏丸からすまさんがヒット打ってくれたら、今度のデートで手つないでええよ」



 津灯つとうが天使の微笑みを彼に向ける。



「なっ、何だってぇ!? カァー!」



 烏丸からすまさんの顔は愛の力で真っ赤に沸騰ふっとうしている。



「打て打て烏丸からすま、かっとばせー烏丸からすま!」



 応援団の声量がヒートアップしている。



「来い、天塩あまじお! お前のボール、ガツンと飛ばしたる!」


「黙れ、カラス! 天塩あまじお君のボールが、てめぇみたいな貧弱野郎に打てるかっピー!」



 カラスとハクセキレイの口ばしバトル。間に挟まれた天塩あまじおは無の極みの表情だ。



 先制のきっかけのヒットを打ったり、ホームラン性の打球を捕ったり、何気にこの試合のキーパーソンとなっている烏丸からすまさん。



 果たして、彼はヒットを打つことが出来るだろうか?



(続く)

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