115球目 千井田が試合に間に合わない
「あぁー! 何で起こしてくれへんかったん、父さん!」
彼女は野球部のユニフォームに着替えながら吠える。
「いやぁ、すまんすまん。ジュンの寝顔があまりにも可愛かったから、10枚ぐらい撮って、起こすの忘れとったわ」
「アホ! バカ! 死ね!」
ちなみに、
※※※
彼女はホットドッグをもごもごしながら、左の前脚でポケットの中をまさぐる。財布を探すが入っていない。これでは電車に乗れない。
「あーん! あたいのアホ―!」
彼女は人目をはばからすに泣きわめく。その側を黒塗りの高級車が立ち止まる。窓が開いて、
「おや?
「フン! あんたに関係あらへん。あたいはこの脚で
「それじゃ、試合に間に合わないよ。私の車に乗って行かないかい?」
「誰があんたの車乗るか!」
「そう。せっかく極上ふわトロハンバーガーが余ってるのになぁ」
「の、乗せてくれやん……」
(続く)
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