104球目 刈摩百斗は口だけじゃない
いつもの
「先ほど、120から140のレンジでは、自分のストレートが打てないと言いましたよね? つまり、140キロ以上のボールが投げられるということですか?」
「もちろん。この前計ったら、MAX144キロだったね」
当然と言わんばかりに、さらりと発言する。
「ならば、今、私達の前でその速さのボールを見せて下さい。それが見られたら、
「いいよ。あと、私が144キロ以上投げたら、そのマシンを100万円で譲ってくれるかな?」
「それは出来ませんが……、マシンの設計図ならあげます」
「わかった。まだ肩が温まっていないから、キャッチボールしてからでいいよね? 誰か、私とキャッチボールしませんかー?」
誰も
「あたしで良かったら」
「あぁ、助かる。ありがとう」
※※※
キャッチボールを見る限りでは、そんな凄いピッチャーに見えない。今が本気のスピードなら、
「うーん。肩がほぐれてきた。そろそろ投げようか」
「ちゃんと計ってくれよ」
帽子の裏から急にボールが飛び出したような錯覚。
「ひゃ、145キロ……」
恐るべきスーパー1年生投手の出現に、皆は言葉を失う。
「無料でくれるなんて、気前がいいねぇ。お礼にいいことを教えてあげますよ。明日の近畿大会1回戦、僕がリリーフで登場するよ。君達が見に来てくれたら、
「坊ちゃん、そろそろピアノの時間ですよー」
メイド服の黒縁メガネの女性に呼ばれた彼は、「はーい、わかってますよー」と言って、ボストンバッグを右肩にかける。
「
彼は左手を振って去って行く。
甲子園出場を目指す俺達の前に、とんでもない強敵が現れた。
(夏大予選まであと48日)
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