44球目 ドラフト指名はかぶりたくない

 昼休みに、野球部はグラウンドに緊急きんきゅう招集された。帰宅部ドラフト会議の始まりだ。



「野球のセカンドに向いていそうな子がいたら、教えて下さい!」



 津灯つとうが手を合わせてお願いすれば、真っ先にIQ156東代が挙手する。



「ミスター・バンバのフレンズ2人はどうです? 彼らはクイックリー俊敏なコンビです」



 番馬ばんばさんの子分の白山しらやま(キツネ)と八百谷やおたに(タヌキ)は、相手を化かすことに長けているから、意外といいかもしれない。



「アカン。あいつらは俺様に迷惑をかけたことを反省して、今は寺で修行中や。当分、野球部に入らへん」


「うーん、残念。他には?」


「俺っちのクラスに、いつも人形と一人二役やってる子がいるけど、幽霊や妖怪いてないみたい。そやから、余計に怖い」


「その子の運動神経は?」


「可もなく不可もなく」



 烏丸からすまが口ばしを閉じて首を横に振る。津灯つとうは目を小さくして残念がる。



 これ以上、クレイジーな奴が入ってこられたら困るから、俺的には良かったけど。



「あたいのクラスの宅部やかべって子は、まぁまぁ速いやん。帰るスピードは、あたいより速いやん」


「身長はどれぐらいですか?」


「真池より低いと思う。ソフトボール大会でも結構打ってたやん」



 小柄(160センチちょいの真池さんより低い)と俊敏しゅんびん(千井田さんより速い足)を満たした。これはドラフト1位指名確定だ。



「それじゃ、今日の放課後、皆さんで宅部さんを勧誘しましょう」



 皆は利き腕を突き出して、同意の雄たけびを上げる。



(初の練習試合まであと6日)

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