40球目 宇宙人は口で語らない

 目の前のフシギ君が宇宙人とは、にわかに信じられない。だが、東代とうだいはIQ156の頭脳をもって、宇宙人説を補強していく。



「ミスター・ミズミヤ&ミスター・バンバ、彼のスキンをよく見て下さい。ヒューマンが持つべきものがありません」



 彼の手や首元をよく観察する。毛が全く生えていないし、毛穴やシミが全くない。うすだいだい色の絵の具でそのまま塗ったように、キレイすぎる肌だ。



「次に彼のアイズ



 彼の目は赤い瞳があり、これもまた絵の具で塗ったように赤一色だ。



「体毛や瞳孔どうこう欠如けつじょ、私達にないハイパーテクノロジー、オートマティック機械的なしゃべり方、以上のポイントをふまえると、彼はエイリアンの可能性が高いです」



 東代とうだいは名探偵のように彼を指差す。彼は目をつむって、両方のこめかみに人差し指と中指を当てる。すると、俺の脳内にラジオのような雑音が入り、低いナレーター声が響き始める。



<バレてしまったので、説明するんだ。その方のご指摘通り、オイラはオラゴン星人だ。オラゴン星の保養地ほようちとして、この星がふさわしいかどうか、調査しに来たんだ。もし、この星の住人がオイラ達に害をもたらすならば、迅速じんそく殲滅せんめつして、住みやすくするつもりだ>



 こいつの機嫌きげんを損ねたら、人類が滅んでしまうのか? 番馬ばんばさんはボケーッと口を開けていて、全く事の重大さがわかっていない。あんたの暴投でヤバいことになってんだぞ。少しは自覚しろ?



「なるほど。バットだが、テレパシーだけではアンビリーバボー信じられない。私達オンリーでリアルの姿を見せられますか?」



 彼は制服を脱いで、裸の上半身を見せる。乳首やへそがない。皮膚から汗のような銀色の液体が出てきて、それが薄く平たくなっておおっていく。彼の体は銀色になり、額に第三の目、先端がボーリングの球っぽいものがついた尻尾、トカゲに似た顔立ちで、宇宙人のオーラを出す。



「おお、すんげぇ。ゴムみたいに伸びるなぁ、お前の体」



 番馬ばんばさんが彼の左腕をつねって、伸びっぷりに驚いている。過度なスキンシップはやめてくれよ……。



<この星では、オイラ達に似た生き物がいないんだ。しいて挙げるなら、ドラゴンだ。ドラゴンと見なされて争いになるのはゴメンだ。オイラはこの星の知的生命体になりすまして、調査し始めたんだ。君達に正体がバレたことを本部に知られたら、オイラは実験体じっけんたいになってしまうから、どうか黙っててほしいんだ>



 彼は正座をして、頭を地面に何度も叩きつける。土下座のつもりだろうか? 



 俺達は地球のため、全人類のため、彼を“地球人”として受け入れることにした。



(初の練習試合まであと8日)

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