39球目 宇宙人の不在は証明できない

 木陰には、きゃしゃな体つきの男がいた。マッシュルームカットの銀髪と毛一つない白い肌が特徴的だ。



「あのー、生きてますかー?」



 俺が声をかければ、男は目をパチクリ、口をパクパクする。



「通信機! 感度良好。異常無。無問題」



 彼は水筒をマイクのように握ってしゃべる。俺と番馬ばんばさんは互いに顔を見合わせて、首をかしげる。



「危険。ボール注意。地球人、野蛮やばん


「誰が野蛮やばんや、ゴルァ!」


「ば、番馬ばんばさん落ち着いて」



 番馬ばんばさんが殴りかかろうとすれば、こぶしが途中で止まる。ろう人形になったかのごとく、少しも動けない。



「ちょっ、どうなってんねん、これ!」



 男の赤い瞳が、番馬ばんばさんの手に集中している。彼がまぶたを閉じると、番馬ばんばさんは後ろから突き飛ばされたかのように、前のめりに倒れる。



「サイコキネシスの能力者か……、すげぇ」


「サイコキネシス? 理解不能。説明要求」


「えっと、物を動かしたり、止めたりする能力だよ」


「理解完了。データ入力開始」



 何だか自動音声的なしゃべり方だな、この人。今まで出会った人の中で、一番変わってるかも。



 すると、目から赤いビームを出して、空中に赤い文字を出し始める。目からビームを出して壁に絵を描く超能力者はいるが、空中に文字を浮かせるのは見たことがない。その文字は、楔形くさびがた文字や象形しょうけい文字と違い、子どもの落書きのような謎の形をしている。



「データ入力完了。サイコキネシス。自己能力説明」


「き、君は一体……」


「彼はエイリアンです」



 振り返れば、キャッチャーマスクなしの東代とうだいがいた。彼はモノクルを押し上げて声高らかに宣言する。



「ナウ、ここがヒストリー歴史の転換点! 私達と彼の出会いが、ワールドをレボリューション革命します!」



(初の練習試合まであと8日)

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