30球目 理事長夫人は焦らない
アンナは、高級マンションの自宅から、双眼鏡で野球グラウンドを見ていた。二度と野球が出来ないぐらいに暴れてほしかったと、彼女は唇をかんで悔しがる。
「他にも手があるわ。絶対に潰してやるんだから」
彼女は魔法陣の紙を引き裂いて、ゴミ箱に捨てる。
「おい、アンナ。この紙、OKかぁー」
理事長の
「うん。これ全部、ハンコ押しといてね」
「わかったぁ!」
彼は三歳児みたく大声で返事して、書斎に戻る。彼女は夫の背中を見て、あごをさすりながら
彼は20年前まで
悪魔と契約を交わし、理事長をおバカに変えてまで、アンナが野球部を潰したいのはなぜか。
彼女が生理的に野球嫌いだからである。
※※※
アンナの父は
甲子園の試合がない日も、TVで野球中継を見させられる。
資産家の
彼女は野球部を消すため、部屋にこっそり酒やタバコを置いて、
何回もグラウンド撤去を夫に求めたが、いつか復活するからと首を横に振られる。そこで、彼女はIQの溶ける料理を夫に与え、自分のあやつり人形に改造した。最近はグラウンドをラグビー用に改造するアンナの案にうなずくようになった。
「
アンナは赤いマニキュアを塗りながら不敵に笑う。
(水宮入部まであと1人)
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