なんでもBOX
大河井あき
なんでもBOX
これは小学生だった頃の、図工の授業についての話です。
あるときの授業で「なんでもBOX」を作るというのがありました。この「なんでも」というのは自分の好きなものはなんでも入れていいという意味だったらしく、教科書にもブローチや指輪といった小物を入れている小さな箱の写真が載っていました。
しかし、私は何を勘違いしたのでしょう。「できる限りなんでも入る箱」を作ろうと考えてしまったのです。そこで目標として掲げたのが、「人が入れる箱を作ろう」というものでした。
私の発想は趣旨を捉え損ねたまま膨らんでいきます。人が入れるなら、車の形をした箱にしよう。確か家に白い段ボールがあったから、救急車がいいかもしれない、じゃあ、ハンドルはどうしようか、などです。
その日はアイディアを考えるのみで、次週に材料を持ってきて制作を始めることになりました。先生からどのようなものを作るか聞かれなかったのは、まさか人が入れるほど大きなものを作ろうとしている生徒がいるとは思わなかったからでしょう。
意気揚々と段ボールやガムテープなどを用意しているうちに、一週間はあっという間に過ぎていきました。
無茶に気付いたのは当日、家を出ようとしたときでした。
当時、私の家から学校までは三十分ほどありました。その道を、ランドセルに加えて段ボールや工具を抱えて行こうというのです。それも、人が入れるサイズの救急車を作ろうとしていたので、引っ越しに使うような大きな段ボールを二、三枚用意したのです。それを小さな体で運ぼうというのです。
案の定、道中はとても苦労しました。特にきつかったのは傾斜が急な坂道を五分以上もかけて上らなければならなかったことです。私はひいひい言いながら、それでもどうにか、妹にも手伝ってもらってようやく学校まで運ぶことができました。
運んだあとは楽しい苦労が待っていました。カッターやガムテープを駆使して、段ボールを切ってつなげて組み合わせて、四人ほど入れる大きさの救急車を完成させました。ちゃんとくるくる回るようにしたハンドルを握りつつ、心地よい疲労感と達成感に浸りました。
素敵な時間は夢のように過ぎていき、チャイムを合図に終わりを迎えました。
みんなが図工室を出る準備を始める中、夢から覚めた私は自身の無計画さを再び後悔したのです。
この救急車、どうやって持って帰ろう?
なんでもBOX 大河井あき @Sabikabuto
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