3ページ目 碧と若葉の本気・・・?

 朝。なので起きた。しかし眠い。なのでまた寝ようとしたのだがスマホを見るとあまり時間がないようだった。しかも大介から「今日は早めに学校に来てくれよ!」とメッセージが表示されていた。昨日話したからわかってはいるものの、面倒だ。しかし親友であり委員長様のご命令は絶対だ。昨今はブラックな会社なら上司の指示は絶対、従わなければ左遷。公務員なら厳格な官僚制が働いているため、業務の効率化を求められている。そのためいちいち上からの指示に反発していては碌に仕事が進まない。残業だって当たり前の部署もあると聞く。社会は厳しい・・・。

 というわけで(何がというわけなのか)さっさと朝食を済ませ、支度をし、家を出た。家からは自転車通学であり、大体15分くらいのところに高校はある。あそこらへん坂も多くて結構きつい・・・。


 駐輪場は二階建てになっており、一年生は二階に停めることになっている。俺は自転車に鍵をかけて昇降口へと向かった。今はまだ始業時間よりまだ少し早いため、人の通りもまばらだった。A、 B、 C、 D組は昇降口から右に向かい、保健室の前を通って階段を上る。E、F、G、H組は左に向かって図書室の前の階段から5階にある教室へと向かう。またそれぞれの棟にある教室は渡り廊下で繋がれており、行き来も自由にできる。俺はF組なので図書室の前の階段から5階に上がった。最初教室来た時めっちゃ疲れたんだよな・・・。受験終わりで碌に運動してなかったから筋肉痛にもなったわ・・・。

 教室の扉に手をかけて引いた。教室の中を見回すと、そこには既に理高会のメンバーはいた。碧はやはり、その容姿と人当たりの良さから周囲に人を集めていた。

まぁあのキャラは作ってるんだがな。全く・・・顔立ちばっか綺麗になりやがって。

俺に対する当たりももっと柔らかくてもいいじゃねぇかよ・・・。あいにく俺はツンデレなんて都市伝説だと思っているので、あいつの言動やらが好意の裏返しとは思っていない。

 緑谷の方は・・・と目を向けると、碧のように何人も人を集めているわけではないものの、席が近い周囲の生徒たちと楽しそうにおしゃべりしていた。うんうん、お父さん安心したぞ。気が弱いところがある緑谷が友達と仲良さそうにしてるのを見られて。え?誰がお父さんだって?俺だよ俺。オレオレ詐欺じゃないからね。そもそも緑谷の父親じゃないんだよな・・・。

 大介は・・・見なくても分かった。男友達と肩を組んで大声で楽しそうに話していたからだ。すげぇよ・・・よくほぼ初対面のやつにあんなノリで会話できるなんて。俺にはとても無理だ。俺に絡まれたやつの気持ちとか考えるといたたまれなくなる。「何か目の下にクマをうかべた眠そうなやつが絡んできたわ~。やべぇわ~ちゃんと寝てるかな~」とかな。あれ?それ俺のこと気遣ってくれちゃってない?

まぁあの明るさこそがあいつの良さなんだけどさ。

 大介は俺が来たことに気づくと、さっそくできたであろう新しい友達に別れを告げ、俺の方へと向かってきた。


「おはよう!カズ」

「ああ。おはよう」


俺たちは互いに挨拶あいさつを交わし、碧と緑谷呼んで朝の会議を始めた。碧の近くのとりまきから「何あの人たち?松山さんとどういう関係?」などといったことを言われた気がするが俺も大介も無視した。そして俺たち4人は窓際後方に集まった。


「みんなちゃんと考えてきたよなっ?カズの話は昨日大体聞いたんだけど、碧と若葉はどんな感じなんだ?」

「私が考える理想のクラスは、私が委員長、青山が副委員長、知一は・・・雑務でいいわね」

「俺だけ雑務かよ・・・」

今日も碧さんは機嫌がよろしいようでなによりですわ。

「冗談冗談、碧ジョークよ。あなたのクラスでの役割は私に言われなくてもすでにあなた自身が気づいているんじゃない?」

いやジョークならもっと楽しそうに言えよ・・・。目とか声音とか冷たいんですけど。まぁそれはともかく。

「こんだけ付き合いが長けりゃお前も俺の性格やらはとっくに知ってるわな。俺は表立って仕事はしないタイプだ。お前か大介の手伝いをしつつ、観察者としてクラスの様子を見る。」

「そうね。あなたはコミュ力は乏しいものの、人間観察においては悔しいけど・・・私も優れていると認めざるを得ないわ」

珍しいな・・・遠まわしでも俺のことをほめるなんて。

「手伝いならあなたは青山の方をお願い。私は女子中心、青山は男子中心にクラス内の雰囲気が悪くならないようにこれから努力するから」

実際、理想のクラスなんてものはそんなにすぐにできるとは思っていない。だから俺たちが中心となってこれからうまくやっていこうということなのだ。

「じゃ、じゃあわたしは碧ちゃんの手伝いをするね!わたしたちが本気を出せばきっといいクラスになるよ。ねっ碧ちゃん!」

緑谷はやる気十分に両腕でガッツポーズをしてみせた。その拍子に肩のあたりで切りそろえられた綺麗なダークブラウンの髪揺れた。あれ・・・髪、少し短くしたかな?最後に見た時より短い気が・・・。

「ええ、お願いできると助かるわ。私たちの本気見せてあげる」

碧は緑谷の言葉に優しく返事をし、その後で勝気な笑みを見せた。こいつのこの顔久しぶりに見たな。勝負どころとかでは見事なくらい負けず嫌いだからな。でもその性格があるからこその完璧っぷりなんだろうな。

 しかし・・・あんま本気出しすぎんなよ?それで誰か泣かせたら元も子もないだろ。緑谷の方は緑谷の方で頑張りすぎてしまわないか少し心配ではある・・・。

「俺たちが何とかして委員長、副委員長を勝ち取って見せるさ!カズと若葉は何の係とか決めてるのか?」

「「国語係」」

大介の言葉に俺と緑谷の言葉が重なった。

「担任が国語教師だから、授業の連絡とか提出物とか楽だろ?」

無駄にエネルギー使いたくねぇし、職員室苦手だし。

「わたしは・・・本のことたくさん知ってそうだから・・・かな」

「そうか、お前ららしいな。よし!それじゃあ俺たちで最高のクラスを作り上げようぜ!」

「「「おー!」」」

俺たちはそう言って手を合わせた。多分これからが大変だろうな・・・。


 面倒なので結論から言う。見事にもくろみ通りになった。担任が「委員長やりたいやつ誰かいるかー」と言ったところに大介ともう一人の真面目そうな眼鏡くんが手を挙げたから「それならじゃんけんしろ」ということだったので見事大介が勝った。こいつとじゃんけんやると8割方勝てねぇんだよな・・・。

 副委員長については碧の他に男子女子含めて何人か手を挙げたんだが・・・。


「私が副委員長やっちゃ・・・ダメかな・・・?」


と男子に向かってはとろけそうな上目遣いで見事黙らせてみせ、女子に至っては


「~さん、~さん悪いんだけど、やらせてくれないかな!」


と好感度マックスの微笑みとともにそう言って黙らせてみせた。「もうこいつ一人でクラス支配できるんじゃ・・・」と思うほどだった。やっぱこいつの本気って恐ろしい。

 俺たちの係の件は、男女それぞれひとりということになっており、他のやつらと被ったがそこは緑谷が・・・


「お願いします!どうしてもやりたいんです!」


と涙目になりながら必死に、そして本気で懇願したら、源さんは見事に折れた。実に美しい姿だったよ緑谷・・・って誰だよ源って。いかにも国語好きそうなやつやな。まぁどうせすぐ忘れるだろうけど。

 委員会の方も同様の手口で俺と緑谷が図書委員を勝ち取った。俺と緑谷が立候補したとき「あいつらって、そういう関係なのかぁ~」とか言ってた気がするが聞かな

かったことにしてやる。


意外とみなさんチョロくないですかね・・・



 

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