2ページ目 理想のクラスに必要なのは・・・
あの後、俺たちはそれぞれ帰宅した。俺は玄関のドアを開けて家に入るとリビングには母さんがいた。
「お帰り。遅かったじゃない」
「まぁね。あいつらとちょっと話してたから」
「聞いたわよ。あの子たちと同じクラスなんだって?松山さんちの碧ちゃんによろしく言っといて」
「分かった分かった」
俺はそう言って二階の自分の部屋へ向かった。碧のやつとは誠に
俺は自室に荷物を置き、手早く着替えを済ませた。母さんが作ってくれていた昼食をサッと済まし、大介から渡されたルーズリーフに理想のクラスとやらについて書いてみることにした。したのだが・・・
「めんどくせぇな・・・」
10分ほど考えてみたがなかなかいい案が浮かばない。俺に書かせたらアニメや漫画、ラノベに出てくるようなクラスになっちゃうぞ?それでいいのか?例えばクラスに美少女転校生三人(ボーイッシュ系、お嬢様系、ツンデレ系)を呼ぶとか、隣からちょっかいかけて俺のことをからかってくる子を俺の隣に配置させるとか。いやそれは無理だな。転校生はまだ運の問題だからまだしも現実的に俺のことをからかいたいと思うやつなんているわけがない。いつも眠そうな俺の目を見れば誰だって嫌がるだろ。写真には意識してないときは別に不機嫌なわけでもないのに不機嫌そうに写ってしまう。でもこれはデフォルトだ!しょうがねぇんだよ!
こんな益体もないことばかり考えてる場合ではない。さっさと終わらせるため俺は思考を加速させる。理想のクラスに必要なのは何だ?そもそも理想のクラスって何だ?何をもって理想のクラスと定義する?みんな仲良くってか?そんなものは小学生のクラス目標に書いてそうな言葉だ。人の個性は皆それぞれであるがゆえに必ず相いれないやつの一人や二人はいる。それはこれまであまり人と接することはなく、クラスの様子を観察してきた俺の経験が語っている。ならそういうやつらを上手くあしらうのが正解なのか?
思考が上手くまとまらないため、俺は唯一の親友であり、実行委員長の大介に話を聞いてみることにした。俺はスマホを開き、トークアプリの通話ボタンを押した。数回のコールで彼は出た。
「どうしたカズ!?具合でも悪いのか!?」
こいつは昔から俺のことをカズと呼ぶ。
「そんなんじゃねぇよ・・・」
こいつは俺が電話をかけることを天変地異かなんかとでも思ってるのだろう
か・・・。あと声でけぇんだよ。耳に悪ぃんだよ。老後に聞こえづらくなったらお前のせいだからな。
「例の理想のクラスとやらについてだよ。お前はどんな風に考えてるんだ?」
「そりゃあもちろんみんな仲良く・・・って言いたいけどよ、俺だってそんな上手くご都合主義的なことができるとは思ってない。俺は別に
まぁ確かにそういう考え方もある。少年漫画とかでもよくあるが、喧嘩ってやつは互いの譲れない信念同士がぶつかって起こることもある。そうやって
「ただ単純に『ムシャクシャしたから』とか、明確な悪意があったり、暴力が伴うものだったらどうする?」
「そういう時は俺が非暴力不服従の精神でそいつらに立ち向かうぜ!」
「いやガンディーかよ・・・。マジでやったら格好いいけどな」
いやこいつの場合マジでやりかねない。それくらい熱い男なのだ。
「けどそんな悪意が見え隠れする喧嘩が起こるはずはない」
大介は確信をもってそう言った。
「お前が観察者としてちゃんと見ててくれるから」
「お前・・・」
中学でも大介と同じクラスになったことはあった。俺は目立たない観察者としてクラスの情勢を見てきた。その様をこいつもちゃんと見ててくれていたのだ。
「無限にいいやつだな」
理想のクラスに必要なのは案外マジで友情なのかもしれない。いや待てよ?クラスには女子もいるんだぞ?女子とも友達にならないといけないのか・・?誰もそんなこと言ってないんだよなぁ・・・。
大介は話を続ける。
「まぁ俺が考える理想のクラスに必要なのはカズのような観察者と、品行方正で生徒の模範になってくれる委員長、例えば碧?みたいなやつと明るくてクラスを盛り上げてくれるムードメーカーだな」
「碧はどうせ言わなくてもクラス委員長になるだろ。ムードメーカーはもちろんお前が引き受けてくれるよな?今日もさっそく雰囲気明るめのやつらと仲良くしてたじゃないか。俺はああいうやつらとつきあうのは苦手だがな」
「カズがそういうの苦手なのは俺も昔から知ってる。俺・・・しかいねぇよな!ああ!努力と根性でどうにかしてみせるぜ!」
「ああ。やってやろうぜ!」
俺も気持ちテンション高めで返事をし、それから明日朝に碧と緑谷を集めて会議をしようという話になった。それは大介の方から伝えてくれるらしい。その後互いに「じゃあな」と別れの言葉を交わして通話を切った。それから会話の内容をもとに、俺なりの理想のクラス像をルーズリーフにまとめた。ふと窓を見ると、西の空には夕日がのぞいており日が暮れようとしていた。ああ、疲れた。夜はアニメ見て、ラノベ読んでゆっくりしよう・・・。
翌日の朝は春らしいすっきりした空模様だった。雲ひとつないまである。そしてクラス委員と委員会決めの日でもあった。
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