Step4-4 助っ人から習いましょう
「ううぇ!?」
突然の事でたたらを踏んだ私の足元に、鍵と懐中時計がチェーンごと落ちる。あれ、さっきまで壁に差してたよね? 何で落ちたの?
チェーンを引っ張って気づいた。床が石畳じゃなくて、土になってる。っていうか、なんか明るい。
顔を上げると、目が
〈ほら、わかったでしょう。テクト、人の子は薄暗い場所から明るい場所へ移動するのにも一苦労するのですよ〉
〈わかった! わかったから、もう、
〈仕方ないですわね……ルイ、無理をして見ようとはしないで、ゆっくり慣らすのです。目が傷つきますわ〉
「はーい」
〈そのままでお聞きなさい。その鍵を差し捻る事で、小さな異空間へと
ダァヴ姉さんが言ったことを
この鍵で異空間に行ける。押せる壁ならどこでもおっけー。外と同じ時間と空をしてる。神様が作った箱庭……え?
「はこにわ!?」
慌てて目を開けたその先に、満開の花畑が広がっていた。
黄、赤、ピンク、青、紫、オレンジ、白、緑……日差しを浴びて風に揺れる、カラフルな色が突然視界を埋め尽くす。わ、わ、すっごい。いい匂いする!
その花畑を囲うように芝生が広がってて、その
慌てて背後を振り返ると、ダンジョンの壁が扉の形で、
どこぞの映画のような景色だ。神様が作りました、と言われて納得する。ダンジョンから不思議な鍵を使って、こんな
〈広さはそれほどありませんわ。花畑とこの空間を清く維持するための聖樹。その周囲の芝生くらいが実際の空間ですの。遠くに見えるのは
「こんなすてきなところ、もらっていいんですか?」
一度確認しておこう。やっぱりあげない、とか言われても……いやだなぁ。欲しい、ここ。
日光なくても何とかなる、と思ってたけど、実際こうして浴びてるとやっぱり必要なんだなって思うよ。何だか体が軽く感じる。
人間って欲深いからさ、一度無理だと思ったものが目の前にあるとどうしても欲しくなるんだよ……だから本当に
恐る恐る聞いてみると、ダァヴ姉さんはしっかり頷いた。
〈ええ。あなたのための箱庭ですわ。好きになさって〉
「わ、わあ……」
す、好きにって……そこらへんに寝そべって昼寝とか、していいかな。風も緩やかに吹いてるから気持ち良さそうだよ。
〈注意事項ですけれど、聖樹が折れたり枯れると箱庭は崩壊しますから。大事にしてあげてくださいまし〉
「もちろん!」
毎日水をあげたり、養分あげればいいのかな? 木の世話はしたことないからなぁ。
〈この空間には十分に魔力がありますから、それで事足りますわ。ルイが手をかける必要はありません。
「せいい……これから、おせわになりますって、あいさつするとか?」
〈あら、とても良いと思います。聖樹も喜ぶでしょう。私達の様にテレパスを持っているわけではありませんが、きっと応えてくれますわ〉
じゃあ早速
花畑を突っ切るのは気が引けるので、
でも聖樹って何だろう。普通の木とは何が違うの? 見た目は立派な木なんだけど……
〈聖樹っていうのは、場を清浄に保つスキルを持った木の事だよ。長命だから意思もあるね。聖樹の周りでは争い事が起きないとまで言われるくらい、空気を浄化するんだ。争う気をなくさせるんだよ〉
〈モンスターも入ってこられない、一種の結界になってますわ。聖樹の周りに村を興したりしますのよ〉
「そんなすっごいきを、こじんが、しょゆうしていいの?」
〈神様のお
神様は
それに、あまり神様に頼ってると悪い人達に目を付けられる可能性も上がるらしい。珍しいものを持ってると危ないもんね。
私もテクトがいるお陰で安全は確保されてたわけだし、カタログブックで衣食は足りてた。ここに安心の住が貰えたんだよ。これ以上をねだったらダメ人間になっちゃう。
ありがたく、住まわせてもらおう。
「せいじゅさん、これからよろしくおねがいします!」
お辞儀をしたら、太い枝がわさわさ揺れる。
ちょうど風は吹いてなかった。
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