Step3-4 住居の確認をしましょう
〈で、仕方ないから僕に新しい魔法を授けてくれたんだけどね〉
「とつぜんのテクト」
〈聖獣は簡単に魔法を覚えられるよ。ただ、僕は守護の獣だからどうしても攻撃魔法は使えなくて。性質上仕方ないんだよね〉
常に私を守る結界を遠隔でも張ってられるとか十分素敵なチートだと思うんだけど……と考えた時点でテクトが照れた。
あと性質って何だろうね、さっきから出てくるけど。魔法やスキルに関係してるのかな。
〈うん。この世界のすべての命や無機物には、元々魔力が備わっているっていうのは話したね〉
「うん」
だから元の世界では魔力とかなかった私でも、この世界の体になったから魔力がある。実際どんなものなのかは、まったく感じられないけど。魔導具使えるからあるってわかるね。
〈魔力自体に属性はないんだけど、体には属性に関係する魔導器官ってものがあってね〉
魔法やスキルは火、水、地、風、木、金、光、闇と、基本は8属性ある。テクトの結界魔法とか、テレパスとか、特殊なものはそれらとは違う無属性扱いなんだって。魔力そのものの力を活用するそうだけど、理論はわかんない。そういえば、モンスターの攻撃を受けた時に属性を感じる演出っぽいのはなかったな。ただただ攻撃を
体の基礎的な構造の中に、魔力を動かす器官──魔導器官が生物にはあって、それがどの属性寄りなのかによって、使える魔法やスキルに関わってくる。炎の魔法が使える人は、攻撃力アップのスキルを覚えやすいとかね。戦士が多いんだって、そういう人。じゃあ闇や風属性は暗殺者とか盗賊とか? ちょっと安直だったかな。
自分が攻撃や防御、あるいは工業や生活に向いているのか、そういうのも魔導器官に依存するんだって。それを性質って世間では言うんだね。聖獣と勇者は魔導器官が特に強く出来てて、だから特殊で強力なチート魔法やスキルの負荷に体が耐えられるんだね。人の指向性や強さまで生まれつき臓器が決めてるの? この世界すごい。
つまり私の魔導器官は基本の8属性が備わっているけど、攻撃や防御には一切向いてない、っていうように出来てるって事らしい。そういう性質なんだ。もう生まれてしまったからには、神様でも手を加えられないんだとか。努力でどうにかなる問題じゃないね。
「おたがい、たたかいには、むかないねぇ」
〈ふふ。そうだね。それで授けられたのが
「いんぺい?」
〈隠したいと思ったものをほんの少し次元をずらして隠してくれる魔法。隠された方は自由に歩けるし動かせるけど、魔法をかけた者とかけられたもの以外には認識されなくなるんだ〉
「わー……」
〈次元ごとずらしちゃうから、気配や魔力察知に
五感さえ騙すってすごいな……匂いさえ誤魔化しちゃうって事でしょ? これでモンスターを気にせず、むしろ隣を歩いて通れるんだね! すごいなぁ。
「じゅーぶん、たすかるよ? なにが、ふまんなの?」
〈いちいち僕にかけてって言わなきゃいけないんだよ? ルイに直接授けてくれればそういう手間ないのに〉
なるほど。テクトが私にスキルを授けてほしいってこだわってたのは、タイムラグをなくして便利にしてあげたいって思ってたからなんだね。優しいなぁ。
「まあ、そこはいいよ。かくれたいなって、おもったじてんで、テクトなら、かけてくれるだろうって、きたいしてるし。まいかい、おねがいすることに、なるけどね」
〈そこは任せて。ルイには生活の事すべて任せてしまうんだし。お互い、出来る事で助け合っていこうね〉
テクトはカタログブックが使えないもんなぁ。買い物はお任せあれ!
〈それと、ここに戻る前に情報担当から色々聞いてきたんだけど〉
「うん?」
情報収集が得意な聖獣の事かな?
〈僕の知識は古かったみたい。ここ数百年、目立つ姿の聖獣は世間に出てないから、聖獣自体
「つまり……あんまり、みがまえなくて、いいってこと?」
〈そうだね。少し気は楽になった?〉
うん。テクトを見られた=バレるに直結しないなら、たまたま出会う冒険者に気を張って話さなくていいもんね。
そっかそっか。テクトが聖獣だってバレないって事は、イコール私が勇者だって勘違いされないって事だ。これで安心して、ダンジョンに二人で隠居できるね。
安心したら眠くなってきた……ふぁう。
〈早速アイテムを探しに行く?……ルイ?〉
「あふ……ん、あいてむ、さがす……」
ごしごし目を
んんー。でも、何か探さないと……色々、買い物、しちゃったし……でも、そこ、モンスター、いるし……こま、ったなぁ……
〈ルイ?……あ、そっか。ルイは5歳だった……もう体力の限界か〉
僕と同じに考えちゃ駄目なんだなぁ……そんなテクトの声を聞きながら、私は眠りに落ちた。
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