Step3-3 住居の確認をしましょう
結局テクトは、ピンクのシャツを私用のワンピースに二着加工するまで帰ってこなかった。時間はわからないけど、集中しすぎて腰が痛くなるくらいは放置された。
実に長い間一人にされた私はというと。帰ってきたテクトを前に、しびれた両足でなんとか仁王立ちするくらいには、不機嫌になっていた。
「テクトさんや。わたしはとても、とーっても、さみしかったんです」
〈あ、うん〉
「あんぜんちたいに、モンスターは、ぜったいはいってこない、テクトさんのけっかいで、ぜったいだいじょうぶって、わかっていても、ろうかのさきに、モンスターがいすわってるのは、とてもこわかったんです」
〈……はい〉
「そのじょうたいで、わたしは、きをまぎらわせようと、アイテムぶくろを、かこうしてみました。どうでしょう」
〈お、おお……すごいね、見ただけじゃアイテム袋だとは思わないよ。しかも運びやすい〉
「そうでしょう、そうでしょう。それでもまだ、かえってこなかったので、ぼうけんしゃさんのきがえを、ワンピースにしてみたんです。おしゃれでしょう。ただのふくが、かわいらしいワンピースですよ。ふふ、さいほうは、とくいなんです。なれないぬので、ちからも、うまくでないし、ぬいづらかったけど、とてもじょうずに、できました。あまったぬので、はなのアップリケ、つくってみたりして、わたしはとても、ようじょらしいでしょう」
〈……そうだね〉
「わたし、いいこで、まってましたよテクトさん。ほめてください」
〈うん、ルイはすっごくいい子だ!! ごめんね随分待たせて!! 本当にごめんね!! だから敬語やめてすごく悲しくなってきた!!〉
慌てた様子で私に抱き付いてくるテクトを見ると、ふつふつしてた怒りはすぐに
「すうふんって、いってたのが、こんなにながくなると、とてもつらかったり、するんだよ。なにか、きけんなめに、あってるんじゃないかって、しんぱいする」
私のいた世界は、遅くなったらすぐ連絡を取れる手段があったから……特にそう感じるんだろうな。でもここじゃ携帯電話なんてないし、遅くなった理由もこうして無事帰ってきてくれないと聞けないわけで。
待ってる間、怖かった。
〈そっか……僕は待たされる側の気持ちがわかってなかったね。今度話が長くなる時は、必ず一言伝えに帰ってくるよ。神様の所に行き来するくらいは、テレポートが得意な聖獣じゃなくても気軽に出来るからね〉
「そうしてくれると、たすかるな。わたしも、きをつける」
簡単に神様の所へ行ったり帰ったりできるとか、神の遣いだからかな。安全に神様の所に行けるんなら、私の心配は過剰だったわけだけど。まあ何にせよ、無事でよかったよ。
それでテクトは神様と何を話してたのかな? もしお茶を飲みながら世間話とかだったら私怒るよ? 今度は本気で。
〈違うよ。あまりに神様が融通利かないから、ちょっと白熱しちゃって……〉
「ゆうずう? はくねつ?」
あんな
え? 神様と喧嘩したの? あの
〈勇者じゃないと強力なスキルは授けられないって言うんだ。自分が見逃したからルイはこうして苦労してるっていうのに。自分の非さえ認めなかったね。濁してた。ダンジョンの中に転生したのだって、神様のうっかりで転生の流れから弾かれたせいなのに、まったくひどいよね。まあ勇者じゃないと強大な力に体が耐えられないっていうのもわかるよ。でも僕を遣わした時点でルイは勇者じゃないのに勇者と認識されるような状態になってしまったんだ。この時点で選択肢奪ってるよね。ダンジョンに住むと決めたのはルイだけど、それは外がここより危険度が高いからだ。政治的な思惑が相手じゃ、僕の結界は意味を成さないんだよわかってるだろ! 根本の原因作った神様が無責任っておかしいよね!〉
「う、うん。おちつこうか」
さっきとは真逆の勢いに押されて、今度は私が引き気味ですわ。
テクトって穏やかな子だなと思ってたけど、こんなに熱血できるんだなぁ……それが私の事に関してなんだ。
〈せめて攻撃魔法だけでも教えてあげてよって言ったのに、それも無理だって! 性質上無理だとか、神様なんだからそれくらい何とかしてくれればいいのに!〉
「わあ、テクトがむちゃぶり、いいだした」
〈じゃあルイは何が出来るのかって聞いたら、攻撃以外だって!! 戦闘に関する魔法やスキルは一切覚えないって!! どういう事!? せめてダンジョン内を安全に出歩けるようにしてよって言ってるのにルイに特殊なスキルは覚えさせられないって話に戻る!! 何度も戻る!! 干渉できないのはわかるけどひどいよね!!〉
「うん……ひどいねぇ」
チートスキルは巻き込まれた私には無理だってわかってたけど。まさか私の体がそんなにもダンジョンに向かないタイプとは思わなかったよ。なに、私ってば攻撃系統全然覚えないの? こんなタイミングで知るとは思わなかったよ、まさかの暴露だよ!!
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