Step1-1 現状を理解しましょう
〈おーい、起きなよー〉
ぺちぺち、柔らかい何かに
〈僕、めざましどけい、っていう奴じゃないんだけどなあ……〉
「んー……」
〈そもそもこんな場所でよく無防備に寝られるよね。ある意味大物?〉
「わたしは、どこでも、ねれる、もーん……ん?」
私今誰と話してるの?
意識が急激に
クリーム色が動いて、
〈やっと起きた。おはよう、ルイ〉
「あ、うんおはよう……って、え? だれ?」
床から体を起こす。何かそこかしこが痛い……やだ、私石畳に
私が寝ていたのは、小さ目のホールくらいの部屋だった。壁は全部石レンガ、等間隔に飾られてる
きょろきょろ見回すけど、よくわからない生き物以外、誰もいない。
〈もう、失礼だなぁ。僕だよ。僕がずっと君に話しかけてるの〉
頭に直接響いてくるように聞こえる少年の声と同じタイミングで、小さい手を胸に当てるクリーム色の生き物。
「きみが、しゃべってるの?」
〈そう、僕だよ〉
「……くち、うごいてないけど」
〈僕のスキル、テレパスっていうんだ。頭の中で会話できるんだよ〉
「わぁおファンタジー……」
試しに何か好きな言葉を頭に思い浮かべてごらんよ、と言うので「アップルパイ」と考えた。さくさくのパイ生地にしっとりたっぷり甘ぁいリンゴ煮。バニラ香るカスタード。たまらないよねぇ。
〈あっぷるぱい、っていうのが何かわからないけど……余程好きな食べ物なんだね。君の心に、幸せな気持ちがいっぱい
「うん。アップルパイは、ほんとにさいこうで……って、」
え?
〈テレパスの事、理解できた?〉
「あ、はい」
食べてる瞬間まで想像したのも幸せな気分に浸ってたのもバレバレじゃないですかやだぁ! 食い意地張ってるのもバレて疑いようがない!! テレパスってすごい!! 私の思考はバレてるのにそっちの気持ちは私に伝わらないのは何でかな!? 半端ないなスキル!!
クリーム色の生き物は腰に手を当てて、私を見上げた。小さいなぁ。小型犬よりちょっと小さめ? リスよりは大きいよね。
〈さてルイ、目が覚めたなら状況を把握した方がいいね。まず転生の流れから外れた話だけど……ルイ?〉
「てんせい……って」
転生って死んだ人が生き返るやつだよね、じゃなくて!
やっぱり私死んだのかー、でもなくて!
死んでも私の意識残ってるってどういう事、とは思うんだけど!
転生先ファンタジーだなぁ、ってなるけどその前に!
「ぱっとみて、てんせいしてるって、わかるの!?」
〈小さい体に収まりきれない大きな魂。不釣り合いだもの。わかるよ。前世の記憶を持ったまま転生する人は、時々いるんだよ。世界を越えるのはなかなかないけどね〉
「たましい!? そんなのみえるの!?」
〈これでも聖獣カーバンクルだからね。聖獣は本質を見通す目を持ってるんだよ〉
「せいじゅう、すごい!」
さらにファンタジーきたぁ! カーバンクルってゲームの召喚で有名な可愛い子だ。なるほど、愛らしい姿は共通してるね!
しかし、本質を見通すとか……悪い人が色々取り繕って
〈ふふ。まあ、そんな認識でいいよ。それより、落ち着いてきた?〉
「ん?」
〈状況を把握した方がいいよ、って僕は言ったね〉
「うん」
〈まず、自分の手を見てごらん〉
手? 何で? とりあえず言われた通りに、手を目の前に上げてみた。あれぇ、なんか小さい……もみじのはっぱ、くらい?
〈足を見てごらん〉
……なんだか、短いような……やけに靴も小さい……ね?
〈何でもいいから
「なんでもいいって、そんなむちゃぶり、とつぜん、すぎる、よ……」
……あれ? よくよく聞いてみたら、妙に、舌ったらず、ですね?
〈鏡あるよ〉
さっとカーバンクルが出したのは手鏡だった。顔ぐらいしか映らないサイズのそれでも、よくわかった。
小さなカーバンクルとの距離が妙に近く感じたのも、いつもなら
ちょこっと出た鼻。丸っとした目。生まれつき柔らかい、ふわっとした髪。ほんのり赤いふっくらほっぺへ手を伸ばすと、鏡の中の女の子の頰がぷにぷにと
「わたし、こどもー!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます