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2052年、やつらはとうとう現れた。正確に言うと、姿をみたわけではない。地球の太陽光が当たっていないほう、つまり、夜側の全域が真っ黒な雲に覆われているISS(国際宇宙ステーション)の映像をニュースで見て、咄嗟にそう思った。


あの雲は黒雲(こくうん)またはブラック ラウドと名付けられた。国によっては悪魔の雲またはノアの雲とも呼ばれている。その名の通り、この雲はただの雲ではなく、人類に壊滅的な被害をもたらした。 大気や雨を汚染し、雲下を有毒化した。黒雲の成分は神経に影響するらしく、触れた人や動物を凶暴化し、植物を汚染した。突如現れた謎の雲は大飢饉を招き、人々を殺し合わせ、都市を壊滅させた。混乱は瞬く間に広がり、恐ろしい惨劇が世界中で起こった。この時代にロマンはない、あるのは絶望だけだった。

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