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家のベランダで望遠鏡を覗き、少年がいつものように夜空を観察していると一筋の光が見えた。流れ星だ。これは幸運だと少年は目をつむり、いつか、あの輝く空に行けるように願った。民間の宇宙旅行が成功してから数十年が経ち、宇宙はより身近になっていたが、まだ少年には夢のまた夢だった。願い終わると、少年はそっと目をあけた、そのときだった、夜空が一瞬、昼間のように明るくなった。少年はそれがニュースでみた、大きめの隕石が大気圏で爆発的に燃焼する火球という現象だと思い、これはめずらしいと急いで望遠鏡を覗いたが、もうすでに光は消えていた。望遠鏡の丸い視界には、この夜空を明るく照らす満月がおおらかに輝いていた。
違和感、少年は月の異変に気がついた。満月が少し欠けているのだ。今夜は満月のはずだ、と注意深く見ていると黒く欠けている部分がどんどん広がっていることに気がついた。少年は月食を疑ったが、究極のバランスが保たれたこの宇宙で気まぐれに月食が起こるわけがない、仮にこれが月食だとしても欠けていくスピードがあまりにも早すぎると、これまでに学んだ知識からすぐに違うとわかった。それから、あれこれ考える間もなく、あっという間に月は視界から消え去った。少年は望遠鏡から目をはずし、自らの目で空をみた。ない、月どころか、星もない。宇宙がなくなっていた。
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