第74話

「「「かんぱーい!」」」


 家の中にそんな声と共にキーンとコップのぶつかり合う音が聞こえた。

 全員が俺の家へと揃って軽くパーティのようなものを開くことになっていた。


「久しぶりだな。圭人も結衣さんも」


 父さんの一皮渋い声が聞こえて来た。


「久しぶり。父さん」

「久しぶりです!」


 それに反応して返す。一時期反抗期的なものもあって仲は良くなかったけど今は相当仲良くやっている。


「圭人くん、ありがとね。結衣のことを向こうでも助けてくれて」

「結衣にはこっちが助けてもらってばっかですよ」


 次に喋ったのは結衣のお母さんだ。


「けいくんは私がいないと駄目だからね」

「お前はもうちょっと自重しろ」


 そう言って結衣の頭をコツンと叩いて注意する。それで笑いが起きる。


「前より二人とも仲良くなってるわよね」

「それは思った。そうよねー」


 母親同士がそう話していた。俺も中学くらいになって知ったのだが、結衣のお母さんと母さんは幼馴染らしい。

 相当長い付き合いだからそんなに仲良いんだなって思ったことを思い出した。


「まぁ、そういう話もして貰うわよ。この場では」


 母さんがそう言って仕切りだした。お酒も回り始めて少しめんどくさくなる時期だな。


「そうだぞ。お前と結衣さんの向こうでの生活をちゃんと教えてくれないと寧々が心配してたんだから」

「ちょ! お父さん!」

「へーそうなのか」

「そうなんだね」


 父さんの言って何気ない言葉に俺と結衣は思わず口元が綻んでしまった。心配されているってことは大事に思ってくれてるって事と同じだもんな。


 そんな風に喜んでいる俺たちとは裏腹に、みるみるうちに寧々の顔が赤くなってくる。


「そんなに恥ずかしがらなくても良いのに」

「恥ずかしいものは恥ずかしいの!」


 寧々はそう言ってプイと顔を極端に逸らしてきた。


「寧々ちゃん安心して」


 そんな様子を見た結衣は寧々に語りかけるように話していた。


「けいくんも寧々ちゃんのこと心配してたんだからお互い様だよ」

「そんなにだと思うけど……」

「嘘だって! 事あるごとに『寧々は大丈夫かなー』とか言ってたでしょ!」

「そ、そうだったの?」


 結衣の言葉を聞いた寧々は恐る恐る振り向いてきた。


「別にそんなには言ってないと」

「シスコンなんだから隠したら駄目だって」

「な! そこまで言うかー!」

「ふーんだ」


 ちょっとした話が大きくなりかけていた時


「ぷぷっ……」


 と横から吹き出す声が聞こえてきた。

「うん?」

「どうしたの?」

「やっぱり二人は面白いなって。こんな感じで向こうでも楽しくやってるんでしょ? なら安心だよ」


 寧々は笑いながらもそうやって言葉を紡いでいる。


「まぁ、楽しく過ごせてるよ」

「そうだね。有紗ちゃんと聡太くんっていう面白い友達もできたし」

「なにそれ! 詳しく聞かせて!」


 そんな風にパーティーは円滑に進んで実家に帰って初日が終わった。

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