第67話
「結衣!」
「あっ! けいくん。やっと来てくれた」
走り続けているとやっとな事で結衣を見つけた。
「ふぅー。良かった。何事もなくて」
「そうだねー。けいくんに何かあったらと思うと心配で心配で」
「それはこっちのセリフだ」
「いたっ!」
コツンと軽く結衣の頭を叩いた。そりゃあ心配かけたかもしれないけどこっちの方が心配した。それは確信してる。
「でも心配だったのは本当だよ? 私も心細かったけど」
しょぼんとした様子で結衣はそう言ってくる。
「それはもちろんわかってるよ。ごめんな」
「でも、ちゃんと来てくれたからね」
慰めのような言葉をかけると結衣は、笑顔でそんな事を言ってきた。
「まあ、そりゃあ結衣が何処かに行ったら探しに行くだろ」
「ほんと?」
「ああ。本当だ」
「ふふっ。私は本当に幸せ者だよ」
結衣はいきなり笑い出してそんな事を言ってきた。
「どうしたんだ急に?」
「いやー。何でもないよ」
「そうか?」
「強いて言えば、私は隣にとても良い人がいて幸せだなって思っただけだよ」
結衣は星空を見上げながらそう言った。
「……。それを言うなら俺だって」
俺は結衣にはどれくらいの感謝をしても足りないくらい沢山のものを貰ってきた。そう言う意味だったら、俺の方が幸せだろう。
「隣にずっと離れないでいてくれた人が居てくれたおかげでここまで立ち直れたんだからな」
「けいくん……」
お互いに名前は出さない。でも誰のことを言っているのかは分かっているつもりだ。
「…………」
「…………」
空白の時間が続く。
「そ、そろそろ行こうか」
「そ、そうだね!」
ずっとそんな風に話していたら急に小っ恥ずかしくなってしまった。
「星が綺麗だね」
歩き出してすぐに結衣は突然、突拍子もない事言ってくる。
「そうだな」
「この星の光って何光年も前の星の光とかなんでしょ?」
「らしいな。そんな話テレビでしてた気がする。——どうしたんだいきなりそんな事を聞いてきて」
「えっとね——いや。何でもないの。強いて言えばずっとこの星空を見て過ごしたいなって」
「大丈夫だろ」
結衣の言葉何かありそうな感じはしたが、対する俺は大して考える事もなく普通に返した。
「それなら嬉しいよ」
結衣はホッとした様子で答える。何に安心したのかは分からないけど、嬉しそうにしてるし良いのかな?
「まぁ、結衣が幸せそうにしてるなら何よりだよ」
「けいくんはやっぱり褒めるのが上手いよね」
「別に褒めたつもりはないけど」
さっきの言葉って褒め言葉に入るのかな。
「褒めると言うか、おだてるというか。まぁそういうのが得意だなって思ったの」
「なるほどね」
言いたいことはわかる気がする。
「別に自分で上手いって思わないけど」
「またまた謙遜してー」
結衣はそう言って俺のことをツンツンしてくる。
「やめろって」
「うふふー。やめないよー!」
ロマンチックに星空の話をしてたのにいつの間にか、いつも通りの会話に戻っていた。
こっちの方が俺的には楽だし楽しいんだけどな。
こんな調子でいつも通りに家に帰っていった。
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