第62話
「じゃーん! どうかな? 送って貰ったんだ」
花火大会の当日。結衣は浴衣姿で俺の前に出てきた。
「へー。浴衣変わったんだ」
前に見た浴衣はシンプルな青っぽい浴衣だったのに対して、今回の浴衣はオレンジや黄色などの花柄がデザインされている浴衣だった。
「うん。寧々ちゃんが私の浴衣を着る事になったらしくて。それで新しいの買ってくれたんだ」
「なるほどな」
「でも、前の浴衣覚えててくれてたんだね」
結衣はそうやってふと呟いた。
「まあ。忘れる訳ないよ。だって……やっぱりいいや」
「何言おうとしたのー! 気になるよ!」
「もういいだろ。行くぞ!」
(好きな人の特別な姿なんで忘れる訳ない)
なんて恥ずかしい言葉言える訳無いよな。
「けいくんってやっぱりヘタレだよね。どうせ恥ずかしいからやめたみたいな事なんでしょ」
見抜かれていた。
「ノーコメントで」
「まあそういうけいくんだから何だか安心できるんだけどね」
「うん? それってどういう——」
「じゃあこの話は終わり! 花火大会にゴーゴーだよ」
結衣の言葉が気になり訊こうとしたが、話を変えられた為聞くことができなかった。
「今日ってどこ待ち合わせだった?」
部屋から出る前に結衣はそんな事を訊いてきた。
「ちゃんと覚えておけよ。河川敷近くのコンビニだよ」
「あー! あそこね」
「ああ」
そうやって返事をしたが、間違ってないかを、確認しようとすると、電話がかかってきた。
「誰からー?」
「聡太からだ。何かあるのか?」
「さあ。分からないけど取り敢えず取ってみようよ」
「そうだな」
少しやり取りしてから、電話を取った。
「もしもしー。どうしたんだ?」
「もしもし! 良かった出てくれた」
「あれ? 有紗さん?」
聡太からの電話だった筈なのに何故か有紗さんが出ていた。
「まあ。気になる事はあると思うけど、こっちもいろいろ大変な状況だから簡単に話すわね」
「分かった」
電話越しにでも分かるくらいの急ぎ様だった。
「私と聡太の親同士が一緒に花火大会に行く事になったから、私と聡太の二人とも行けない! ごめんなさい」
有紗さんはそう説明をすると直ぐに電話切った。
呆気にとられていたが直ぐにいつも通りに戻って、結衣に訊いた。
「さっきの話聞こえてたか?」
「まあ、うん。聞こえてたよ」
結衣は濁しながら答える。
「じゃあ、しょうがないし。二人で行くか」
「そ、そうだね 二人が来れないのは残念だけど気を取り直して楽しもうよ」
「……そうだな!」
いきなり二人が来れなくなったけど、まぁ仲が悪いよりは、二人の親が仲良いのは良いこと何だししょうがないかと思った。
こうして俺たちは二人で花火大会に向かう事にした。
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