第53話
そして期末テスト当日になった。1日目は国語と、化学。2日目は英語、数学、社会だ。
他にも保健体育やら家庭科やらがあるが、今回の勝負は基本の5教科だけなので、そこまで勉強はしていなかった。
教室でそんな風にテストのことを考えていると、聡太と有紗さんが教室に入ってきた。
「よう圭人」
聡太の目の下にはクマがクッキリと出来ていた。
「よう、聡太。すごいクマだな」
「お前だって大きなクマができてるぞ」
俺がちょっと嫌味風に言うと、聡太も同じような言葉で返してきた。
「ふっ。聡太。今ならまだやめても良いぞ。恥を描く前にやめた方がいいんじゃないか?」
「よく言うぜ。しかし、今回勝つのは俺だぜ」
俺たちは最近目を合わせる度にそんなことを言い合っている。毎回そのやりとりを横で見ている結衣と有紗さんは、呆れたように声をかけてきた。
「はいはい。取り敢えず席につきましょう」
「そうだな。こんなやりとりなんて意味ないでしょ」
二人は毎回俺たちのやりとりを横で見せられているためか、扱いに慣れてきたみたいだった。
しかし、意味ないって言うのはな。成り行きとはいえ、勝負事になったなら雰囲気は大切にしないとな。
「まぁ取り敢えず席に取るか」
2人に水を差され一気に言い争う気がなくなったので、素直に従うことにする。
「そうだな」
俺の言葉を受けて、聡太も席に戻っていった。
その後は普通にテストを受けて1日目が終わった。俺たちはテストの話をしながら帰路についていた。
「今回のテストの出来はどう?」
「まぁ流石にいつもよりも出来たとは思うけど」
「だな。こんなに勉強したのなんて入試以来だしなー」
「あれだけ勉強をして、上がらなかったら、本当のバカよ」
結衣の問いに対して俺たちはそれぞれの返答をした。
「今回に関してはこの4人の中で誰が1位になるのか分からないわね」
テストの出来を聞いた後、有紗さんがそんな事を言い出した。
「いや、それでも有紗が1位だろ」
「うんうん。有紗ちゃんだって勉強してるんでしょ」
「ええ。してるわよ」
「なら大丈夫だって」
有紗さんの発言を俺たちは全員で異議を唱えていた。
「そっか。じゃあ私がまた1位を頂いちゃうわよ」
そう言って有紗さんは、やる気を見せるように拳をぐっと構えた。
「でも油断してると俺が勝つからな」
「聡太に負ける私じゃないわよ」
「なんだとー」
そんなやり取りをしている聡太と有紗さんの会話を見て仲良いなと思っていた。すると結衣に話しかけられた。
「やっぱり2人とも仲良いね」
結衣も俺と同じ事を思っていたみたいだった。
「そうだな。やっぱりあの時無理矢理にでも行かせてよかったな」
「うん! あの時以来2人の距離がグンと近づいた気がするもん」
俺たちはあの時以降の、聡太と有紗さんの事を話していた。
「何の話をしてるんだ?」
話に一段落がついたのか、聡太と有紗さんはこっちの話に混ざってきた。
「何でもないぞ」
「そうそう。何でもないよー」
そう言って俺たちは顔を見合わせて笑った。
「何それ気になるじゃないの」
「別に大した話じゃないからね」
そんなやり取りをしながら俺たちは帰っていった。
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