第52話
数学の小テストの後、俺は勉強に勤しんだ。
まずは苦手な教科をあげることにした。得意な教科をあげるより、苦手な教科を上げた方が点数は上がると思ったからだ。
モチベーションを上げるために、得意な教科を頑張るという方法もあるらしいが、モチベーションありまくりなので苦手な教科を頑張ることにした。
出来ないのは数学なので、結衣に教えてもらうことにした。
「——という訳で数学の分からないところ教えてくれないか?」
「うん。全然良いよー」
俺のお願いに対して結衣は了承してくれた。
「悪いな。結衣だって勉強があるのに」
「全然良いよ。それにけいくんと勉強するのも楽しいし」
「そうか? なら良いけど」
ちょっとした雑談をしてから、勉強を本格的に始めることにした。
数十分後。
「結衣。ここ分かるか?」
俺はなかなか正解しなかった問題を結衣に訊いた。
「ああ。ここはねこの公式を使ってあげると結構簡単なんだよ」
俺が言った問題を見ようと、結衣はヒョコッと俺に近づいてくる。こういう事は何回やっても落ち着かないものだ。
気にした様子もなく、結衣は俺が苦戦していた問題をスラスラと解いていく。
「ね! 簡単でしょ」
そして問題を解き終わり、そう言って微笑んできた。可愛いと思ったのはもちろん内緒だ。
「ああ、ごめん! 近かったよね」
結衣は距離感に気がついたみたいで、すぐに元どおりの距離に戻った。
その時顔を少しだけ赤く染めて恥ずかしそうにしていた。
やっぱり気がついたたら、思う事は俺と同じみたいだ。
(いやいや何を考えているんだ。今日は勉強をする日だって)
俺は今日の目的を忘れそうになっていた頭を、強引に元に戻した。
「ともかく、何でそんな簡単そうに解けるんだよ。この問題ワークの中でも難しいって先生が言ってた気がするけど」
「えっ……。まぁ何となくなのかな?」
そう曖昧に結衣は答えた。
「そういうものか」
「そういうものだよ。じゃあけいくんも頑張って解けるようになろうね。聡太くんに勝つんでしょ?」
「ああ、もちろん!」
結衣の問いに対して俺は、そう自信満々に答えた。
そんな感じでテストに向けて苦手な教科を重点的に勉強を頑張っていった。
***聡太編***
「じゃあ今日は何をやろうかしらね」
有紗はテストの範囲表を見ながらそんなことを呟いていた。
俺と圭人が約束した日から付きっきりで俺の勉強を教えてくれている。
「なぁ、有紗」
「うん? どうかした?」
「ここまで付きっきりにならなくても良いんだぞ。有紗も自分の勉強があるだろうし」
俺は思っていることを有紗に話してみた。
「全然良いわよ。こうなったのも私も少し関係あるし」
「うん? どういうことだ?」
「何でもないわよ。じゃあ今日は英語からやりましょうかね」
「はーい……」
有紗のやる気のある言葉に対して、俺は気の抜けた返事で返した。
有紗の言葉は気になるけど、今は勉強に集中しないとな。
そう思って俺はシャーペン握った。
「——ここはね、最近習った文法を使えば結構文が分かりやすくなるわよ」
「へー。……確かに前よりは読めてる気がする」
「でしょ!」
「有紗って教え方が上手いよな。本当に分かりやすい」
思っていることをそのまま口にした。
「あら、ありがとうね。じゃあ私、先生にでもなろうかしら」
有紗は冗談ぽくそんなことを言ってきた。
「へー。良いんじゃないか。似合ってると思うぞ」
「そう? でもまあ先生ってしんどいって言うしね」
「らしいな」
「出来るだけしんどいのは避けたいかな」
有紗はそう将来についてのことを呟いていた。
「ははっ。有紗らしいや」
「そう? でもそれってなんだか貶されてる気がするんだけど」
「そんな事ないって。気にしなくて良いぞ。めんどくさがり屋だなんてちょっとしか思ってないから」
「ちょっとは思ってるんじゃないの!」
有紗は少し怒ったような口調になっていた。しかし、大丈夫だろう。
「嘘だって全然思ってないから」
「もう! まぁ別に良いんだけどね」
思った通りすぐに元に戻った。こういう場合の有紗は大体、怒った振りだからな。
「じゃあそろそろ勉強再開するか」
「そうね。それにしてもそんな言葉を聡太から聞けるなんて思っても無かったわ」
有紗は驚いたようにそう言った。
「俺だってこれくら言うよ」
「そんなに圭人くんに勝ちたいんだ?」
「まぁなー」
「それじゃあ勉強頑張らないとね」
「そうだな」
その言葉を最後に勉強を再開した。
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