第51話

 聡太と勝負する約束になった一週間後。数学の小テストがあった。期末テストがもうすぐあるのでそれの対策らしい。


「けいくんどうだった?」


 学校でけいくん呼びをするなというのは自然消滅してるらしい。最近ではけいくんとしか呼んでこない。まぁ、最近は別に周りのことも気にしてないし、別にいいんだけど。


「うーん。まだマシだったよ。苦手な数学で70点取れたし。結衣は?」

「私もまだ良かったよかな。90点だったから」

「やっぱり結衣って数学得意なんだな」

「でも、けいくんみたいに国語ができるわけじゃないし」


 俺たちは勉強に関しては正反対のタイプだった。俺が文系で、結衣が理系だ。でもそのおかげで教えあったりできる。

 そんな返ってきたテストからそんな他愛のない会話をしていると、聡太と有紗さんがこっちに来ていた。


「お、二人ともどうだった?」


 有紗さんは頭がいい。理数系ではでは勝てた試しがない。


「うーん。微妙な。85点だったから」

「それでも高いじゃん。聡太は?」


 それに対して聡太は、はっきり言うと勉強はそこまで出来ない。でもめちゃくちゃバカというわけでもなく、平均の前後をうろちょろしている感じだ。


「ふっ。驚くがいい。80点だ!」


 そう言って聡太はテストを見せてきた。そこに見えるのは右上に書かれた80点という文字。書き換えられた痕跡もなかった。


「まじかよ!」

「有紗にしごかれたからな」


 聡太はどこか遠くを見て嘆いていた。


「でもいいでしょ。結果的に点数は上がったんだし」

「ああ。それに関しては感謝してるよ」


 相当有紗さんにしごかれたらしい。まさか聡太にテストで負けるとは。これは思ってた以上に悔しいな。苦手教科とはいえテストで聡太に負けるのは。


「この調子だったら、俺の勝ちが決まるな」


 そう言って聡太は笑う。


「まぁ。俺も負ける気はサラサラ無いけどな」


 俺たちは不敵な笑みを浮かべながら、睨み合っていた。


「二人とも何か怖いくらいのやる気だね」

「これだから男はわからないわね。でもやる気になってくれたら、聡太も追試になることはないだろうし夏はゆっくり出来るわね」

「確かにそうかも。追試がなくなれば楽しく四人で遊べるもんね。二人とも頑張れー」


 横からそんな気の抜けた会話が聞こえてくるが、聞こえなかったことにしよう。

 俺には、いや聡太も同じ気持ちだろう。今回の勝負の賭けである、命令できるというのは、取っておかなきゃいけないからな。


 しかし、この調子だったら確かに負けてしまう。そう思った俺は今回はいつも以上に勉強しようと思った。


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