期末テストと夏休み!

第50話

 聡太と有紗さんの出来事が終わったすぐの時、俺たちの家に聡太と有紗さんが遊びにきていた。

 結衣と有紗さんはジュースを買いに出て行った時だった。

 聡太は口を開いて前の約束について話してきた。


「そういえば、俺、お前に殴られてないや」

「いや、もういいだろ。綺麗に終わったんだし」


 俺は、聡太との約束は覚えていたが、殴り気はなかったので放っておいたのだ。それをまさか聡太が言ってくるとは。


「いや。一個のけじめとして頼む!」


 そう言って聡太は顔の前に手を合わしてお願いをしてきた。


「そんなこと言われてもな」

「前言ったじゃねえか。殴っただけじゃあ何か気持ち悪いって」

「でもなー……」

「な。頼むよ」


 俺がこれ以上断っても聡太は引くことはないだろう。ならこの会話をすることが無駄だと思った。


「うーん。分かったよ。気は乗らないけど」

「お! 分かってくれるか。やっぱり持つべきものは友だなー」

「そんだけで感謝されるのもおかしい話だけどな」


 俺はそう言ってから、殴る構えをとった。その時だった。


「ちょっとけいくん! 何しようとしてるの!」


 いつの間にか帰ってきていた結衣と有紗さんに止められた。


「いやー。ちょっと色々あったんだよな」

「あ、ああ。そうだよ」


 いきなりの出来事で動揺して、何かあったのを、隠しているようにしか見えていなかったのだろう。


「聡太が唆したんじゃないの?」


 有紗さんはハァとため息をつきながらそう訊いてきた。


「合ってるような、合ってないような……」

「まあ、とにかく喧嘩は駄目よ」

「そうだよー」


 いつの間にか俺と聡太が喧嘩していることになっていた。


「いや、喧嘩じゃないんだけど」

「そうだぞ。こいつと喧嘩する必要なんてないだから」


 勘違いされても困るので、否定すると聡太もそれに乗って否定してきた。


「うーんでもなー」

「なんか引っかかるのよね」


 二人はまだ疑っているみたいだった。


「うーん。でも喧嘩するなら殴り合いなんて俺らするか?」


 ふと疑問に思ったことを聡太に聞いてみた。


「意外としそうじゃないか。お前の時も色々あったし」

「……確かに」


聡太に言われたことを少し考えてみたら、確かにしそうだなと思った。

 そんなちょっとした例え話をしていると


「「だめだよ!」」


 と横からすごい勢いでそう言ってきた。


「そんな殴り合いとか駄目だよ」

「そうそう。もし何か戦うとしたらもっと安全なものにしないと。例えば……テストとか」


 二人はもう俺たちが、喧嘩しているとしか思ってないみたいだった。

 さっきも普通に会話してのに気付いてないみたいだった。

 そんなことを思っていると、何かを思いついたそうだが俺に、小さな声で提案してきた。


「今の展開、面白いし乗ってみないか?」

「そう言ってもな。後でどうなっても知らないぞ」

「大丈夫だって」

「はぁ、分かったよ」


 そう二人で口裏合わせをして、今の展開に乗ることになった。


「じゃあテストで勝負するか」

「本当に良いのか。今だったら俺が勝つと思うけど」


 小テストなどでは毎回俺の方が点数が高いからだ。 


「全然大丈夫。どうせだったら何か賭けでもするか」

「はぁ。——でどんな賭けだ?」


 俺はもうここまで来たら完璧に聡太に合わせることにした。


「勝った方が負けた方に一個命令できる券とか?」

「それは面白そうだ」


 俺が勝ったら、聡太に一個命令できるのは楽しそうだ。


「まぁ、そういうことだから。もう心配しなくて良いぞ」


 聡太は結衣と有紗さんにそう説明していた。


「そっか。それなら一安心だよ」

「じゃあ今から帰って聡太は勉強するわよ」

「えっ……。今から?」

「当たり前じゃない。今のままだと絶対に勝てないわよ。いつもはあんなイチャイチャしてるけど頭は良いんだし」

「分かったよ……」

「じゃあそう言うわけだから。バイバイー」

「ああまた明日なー」


 そんな会話をした後、聡太は有紗さんにつ連れて行かれていた。自分で撒いた種だから頑張れよな。

 俺は聡太にそう励ましの言葉を心の中で呟いた。


「何か変なことになってない?」

「大丈夫だって」

 

 テストが終われば聡太を命令できるのか。その日の俺はそんなことを考えながら、ダラダラと過ごした。

 俺はその時絶対に負けるわけがないと思っていた。

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