第44話
「結衣ちゃん。何して遊ぶ?」
部屋に戻ってきた後、有紗ちゃんがそう聞いてきた。
「うーん……。そうだね……」
私は少し考えた後一つ良いことを思いついた。
「恋バナでもする?」
「恋バナね。いつもイチャイチャを見せつけられてるんだから、大丈夫よ」
「でも、有紗ちゃんも聡太くんにデレデレでしょ?」
「そんなことないと思うわよ……」
最初は強気に聞こえた声も、少しずつ小さくなっていった。
「ほらやっぱり。自覚があるじゃん」
「違うってそんなんじゃ——」
「大丈夫大丈夫。私には分かってるから」
「もう! 分かってないって!」
そう言って有紗ちゃんは、少し怒ったような、恥ずかしいようないろんな気持ちが混ざっている表情でこちらを見てくる。
いつもは私がいじられるし、今日くらいはいいだろうって思った。
それに有紗ちゃんがどれだけ聡太くんの事が好きか、再確認できたし。
そんな事を思っていると
「じゃあ次は結衣ちゃんのことを聞かせてもらおうかしら」
と、言ってきた。
「ちょ! ちょっと待ってよー。私のはもう飽きてるんでしょ!」
「いやいや、また新しい事が起きてるかもしれないしー」
そう言って有紗ちゃんはニコッと不気味な笑顔で笑った。
その時、ピコンとスマホが鳴った。
「あらあら、噂をすればってやつ?」
有紗ちゃんはそうおちょくってきた。「そんなんじゃないよー」と私は否定しながら、スマホを見てみると本当にけいくんからだった。
見てみると
『約束通り、聡太がそっちに向かっているぞ。結衣も有紗さんの家に居るなら早めに出たほうがいいぞ』
と、書かれていた。
けいくんは上手くやったみたいだった。なら私も早めにここを出ないとね、そう思って有紗ちゃんに話しかけた。
「有紗ちゃん! ごめん! 用事を思い出しちゃった」
「えー、デートのお誘いだったの?」
「べ、別にそんなんじゃ無いけど」
「ふぅん」
有紗ちゃんは、何かを怪しんでいるような目でこちらを見てきた。
「本当に大した事じゃ無いんだけど、言わないと何か疑う?」
「まぁ、でも大丈夫よ。行ってきなさい」
「あ、ありがとう!」
私は何だか少し、有紗ちゃんを騙したみたいで悪い事をした気分だった。
でも次会うときに謝ればいいよね、そう思った。
その後、有紗ちゃんの両親とも挨拶をして帰る準備をした。
そして。
「有紗ちゃん。ごめんね。いきなり帰ることになっちゃって。この埋め合わせはするから」
「別にいいわよ。二人の中を邪魔したら、悪いしね」
「ありがとうね」
私はそう言って有紗ちゃんと別れようとした。その時に少しだけ言っておこうと思った。
「有紗ちゃん。頑張ってね!」
「何よ? いきなり」
「いや、多分すぐに意味がわかるから」
「?」
有紗ちゃんは何を言っているかわからなそうだったけど、これだけ言っておきたかった。
「じゃあ、またね」
「ええ。また明日」
そう言って、有紗ちゃんと本当に別れた。
成功しますように、と心の中で祈りながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます