第41話
「有紗ちゃん。家族との関係、上手くいってないの?」
部屋に着くと、私はそう聞いてみた。
「うーん……。お母さんとは十分仲が良いと思うけど、お父さんは……」
有紗ちゃんはそう言い淀み、俯いた。
「お父さんと何かあったの?」
その様子を見た私は、有紗ちゃんに聞いてみた。
「うん……。まぁ良いわよね。私も、結衣ちゃんと圭人くんの過去を聞いちゃってるし」
と、覚悟を決めたようにそう言った。
そう。私はけいくんに告白される前の日、少し有紗ちゃんに話していたのだ。
あの日の二人で食事を作った時の事だ。
あの時はザックリとしか話しなかったけど、聡太くんに詳しい話を聞いたのかもしれない。
けいくんが話したって言ってたし。
それから有紗ちゃん話し始めた。
小学四年から聡太くんのいる学校へ引っ越してきた事。
それから付き合うまで。
付き合ってからお父さんと話すまで。
詳しく話してくれた。
「——て言う事なのよね」
「じゃあ、もしかして聡太くんの表情が薄くなったのは——」
「ええ。そこからでしょうね。まぁ予想だけど」
「そうなんだ……」
そう有紗ちゃんは言った。少し悲しそうな顔で。
私は出したらダメな話題だったかと思って思わず
「ご、ごめん!」
と謝ってしまった。
「全然大丈夫よ。もう昔のことだから」
「昔って言っても、一年経ってないでしょ?」
「まぁそうなんだけどね」
そう言って有紗ちゃんは笑った。私はその笑顔に安堵した。
「じゃあそろそろ普通に遊ばない?」
有紗ちゃんの過去の話が終わり、そう言ってきた。
私はその言葉に反対する意味もないので
「うん! そうだね」
と、返した。
***
その日の夜、私はけいくんと電話していた。
「けいくん。今日は大丈夫だった?」
「ああ。ちゃんとなんとかなりそうだよ」
「それは良かった」
今のところは順調に進んでいるらしい。
「なぁ結衣。そっちの様子はどうだ?」
私が質問した後けいくんがそう聞いてきた。
「うん。こっちは——」
そんな感じで明日のことについて話し終わった。
「それじゃあな」
「うん。バイバイ」
そう言って電話を切った。
(明日は有沙ちゃんと聡太くんにとって、良い意味で心に残る日になったら良いな)
電話が終わった後、そんなことを考えていた。
私たちが勝手にやっていることだから、失敗だけは許されない。
だから、私はけいくんがちゃんとやってくれると信じて自分のやることをやらなきゃ。
そう思った。
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