第37話

「聡太くんと何話してたの?」

「あ、私も気になるわ」


 放課後になり結衣と有紗さんにそう聞かれた。


「何って言ってもな」

「ああ、至って普通の話だもんな」


 本当の事を言ったら、なんだか色々めんどくさそうだったから、適当に濁した。


「えー教えてくれてもいいのにね」

「そうよね。そんな話せない話をしてたなんてね」

「ははっ、そんな大袈裟な事じゃねえよ」

「そうだな」


 俺たちが濁した話について二人は、色々話し合っていた。しかし、文句や皮肉を言うだけで、無理には聞いてこなかった。


「じゃあそろそろ帰るか」

「そうだな」


 俺たちは準備をして帰路についた。


「そうだ! 言わなきゃいけないことがあったんだった」


 帰っている途中、有紗さんがいきなり思い出したようにそう言って、手を叩いた。


「言わなきゃいけないこと?」

「ええ。まだ先だけどこの週末結衣ちゃんをうちに貰うわよ」

「はあ?」


 いきなりの事で何を言ったのかわからなかった。


「もう有紗ちゃん! 変な言い方しなくても良いでしょ。——普通にお泊りするだけだから」

「ああ! そういう事か」


 結衣の説明で納得がいった。


「でもさっきの有紗の説明で結構分かると思うぞ」


 俺が納得いって頷いていると、聡太はそう口を挟んできた。


「そうかー?」

「まぁ、圭人は鈍感だしな」


 そう言って聡太は笑った。


「この笑いは愛想笑いだよなー」

「そうねー。心から笑ってる時はもっと笑うわよ」

「それは楽しみだね」 


 俺たちが聡太の表情事について話していると、びっくりしたように聡太が口を開いた。


「まだそのゲーム続いてたのかよ!」

「だってねー。やっぱり見たいじゃん?」

「だよなー」


 そんな会話をしている横で、結衣は思いついたように手を叩いた。


「ならけいくんも、聡太くんと一緒にお泊りしたら良いんじゃないの? 私たちの家だったら、丁度けいくん一人だし」


 そして、こんな事を言った。その言葉を聞いた有紗さんは


「いいじゃない! 一緒に寝泊りすれば分かることもたくさんあると思うわよ」


 と、結衣の案に賛成していた。


「そんな事で分かるものなのか?」

「まぁね。私たちもやった事あるし」

「えっ! 有紗ちゃんと聡太くんで?」

「あっ……」


 有紗さんが「言っちゃった」みたいな顔で聡太を見ていた。


「別に良いだろ。それくらいバレても。この二人も今同じことやってるんだし」

「そ、そうだけど」

「そうやって説明されると少し恥ずかしいよ」

「——まぁとにかく!」


 脱線しかけていた話を有紗さんが強引に戻した。


「良い考えだと思うわよ」

「まぁ俺も圭人と泊まるのは楽しそうだと思うけど。迷惑じゃないか?」

「別に全然大丈夫だ」

「じゃあ決まりだね!」


 そう言って下校中にお泊り会の予定が決まった。



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