第36話

「はぁー……」

「どうしたんだよ。いきなりため息なんかついて」

「昨日、色々あってな」


 次の日の学校で、俺と聡太はそんな会話をしていた。

 

「そんなになるまで、何をしたんだよ」

「結衣への水着選び」


 俺は聡太に向かってそう言った。これで水着売り場の時の事を、聞き出せると思ったからだ。


「それなら俺もやったぞ!」

「え!」


 聡太は驚きながらそう言ったので、俺も不自然じゃない程度に驚いた。


「もちろん勘違いするなよ。有紗のだからな」

「それくらい分かってるよ」


 変な保険をかけてきたので俺は、適当にあしらった。

「へーどんな感じだったんだ?」

「それはもう、有紗に選べ選べって口煩く言われるんだよ」

「でもそういうところも愛おしくて、好きなんだろ?」

「ま、まぁな」


 そう言って、聡太は頬をポリポリとかいた。

 そういえば有紗さんのことになると少しだけ雰囲気が変わるよな。

 そんな事を思っていると聡太が口を開いた。


「そっちも同じ感じか?」

「まあ、そうだな。俺が選んだら際どいのでも着るのかって、鎌をかけてみたけど効かなかったし」

「そりゃあな。お前が結衣さんに嫌われる事は絶対にしないだろ」

「そうか?」

「ああ、多少の事はするかもしれないけど、それは嫌われないって確信してやってるだろ? 結衣さんはそれが分かってるだろうし」

「……確かに」


 聡太ってつくづく1人のことをよく見てるよな。もう聡太には、隠し事できる気がしないな。


「聡太ってなんでそんな人のこと分かるんだ?」


 俺は思った事をそう聞いてみた。


「別に分かるってほどでもないだろ」

「いやいや。さっきの話もそうだけど、俺が思ってる事簡単に当てるだろ?」

「まあ、面白い人は観察したくなるもんだよ。本当にお前と結衣さんコンビは見ていて楽しいもんな」

「そんな自覚は無いんだけど」


 そんなに俺たちのやりとりが面白いのだろうか。


「そういうもんだよ。——まあとにかく、人を観察する事は面白いって事だよ」

「へー。俺もできるのかな」

「別に誰でも出来るだろ」

「まあ、やる気が起きたらやってみるよ」

「そのやる気がいつ起きるかも問題だけどな」

「はは……」


 図星だったから笑うしかなかった。

 三日坊主で終わりそうだから、やる気すら起きないんだよな。


「じゃあ有紗さんと、聡太は面白いと思うか? 自分的に見て」


 俺は今まで、聞いた事なかった質問をした。俺と結衣の関係は面白いとよく聞くが、自分の関係については何も言わないし。


「別に普通の関係だろ」

「それは、絶対にないと思う。確かに俺も最初はそう思ってたけど、色々話してみたら、バカップルだもんな」

「お前らの方がバカップルしてるって」

「それはもう言われ慣れたから効かないぞ。それにお前らも十分なバカップルだ」

「そんなわけ——」

「おーいそろそろ行くよー」


 聡太が否定しようとすると結衣と有紗さんに呼ばれた。


「昼休みそろそろ終わるし、五時限目は体育よ」


 そんな会話を二人でしていると結衣と、有紗さんに呼ばれた。


「ああ、今行くよー」

「あの話はまた後でな」

「またするのか」

「まあ別にどっちでもいいけど」

「なんだそれ」


 俺たちは結衣たちに返事を返した後、少しだけ、会話をして体育へと向かった。

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