第35話
「はぁー……」
「早く選んでで欲しいなー」
「そうは言っても、何がいいかとか分からないし」
「けいくんの趣味でいいんだよ。けいくんが見たい私の姿が見られるんだよ」
「そう言われても……」
俺はそうやって急かされていた。水着なんて選んだことなんかないのに。
「でも、もし俺が露出度高いやつ選んでも着るのか?」
俺は逃げ道はないかと思い、結衣に鎌をかけてみた。
「そんなの選ぶの……?」
「い、いやー……。どうかな……」
俺が言った言葉に反応して、結衣は涙目になりながら、上目遣いでこちらを見てきた。
(流石にやり過ぎたか)
そう思い謝ろうと口を開こうとした途端、結衣が先に言葉を発した。
「けいくんが望むなら……いいよ……」
「ぐはっ!」
「ど、どうしたの!」
結衣が可愛すぎる。こんな姿誰にも見せるわけにはいかないな。
「やっぱりやめとくよ」
「どうしたの? いきなり」
「いや気が変わったんだ」
「まあいいや。じゃあ気を取り直して選んでもらうよ」
「ああ……」
俺は結衣に押し負けて、水着を選ぶしかなくなった。
こうなったら、結衣にめちゃくちゃ似合う水着を選んでやる。
「うーん……」
そう意気込んだものの何を選べばいいのか分からない。露出は低めの方がいいな。。他の人に見られたくないし。
そういう思いで一つの水着を手に取った。
「これなんてどうだ?」
俺が選んだのは白色の水着にフリルがついてある物だった。
「へー。けいくんはこんなのがいいんだー」
「な、なんだよ!」
「なんでもないよー」
俺が水着を渡すと結衣は、ニヤニヤし出した。俺は恥ずかしくなり、強気に返してしまったが、結衣は流して
「じゃあちょっと試着してくるね」
「お、おう……」
と試着室へと向かって行った。
「はぁー。疲れた……」
一人でいるのは気まずかったが、近くに居ないと結衣が起こりそうな気がしたので、俺は結衣の入った試着室の近くで待っていた。
このカーテンの先で結衣が着替えているのだと考えてしまったが、すぐにその考えを振り払った。
こんな事は考えないようにしよう。そう思って待っていた。
そして少ししてカーテンが開いた。
「ど、どうかな……」
「あ、ああ。よく似合ってると思うぞ」
「本当?」
「あ、ああ」
出てきた結衣は可愛かった。本当に俺なんかが付き合って良いのか、なんて思うほどに。
そんなことを思っていると結衣は、顔をしかめた。
「何か、ダメなこと考えてるでしょ」
「いやいや、結衣を貶すことなんて考えてないよ」
「じゃあまた、自分を卑下してたの?」
「そんな事は……あります……」
俺はそのまま、結衣が言った言葉にそう言って頷いた。
「だめだよ。私がけいくんと付き合う方が、おこがましいと思ってるくらいだもん」
「そ、それはない!」
「そう思うでしょ?」
「あ、ああ」
結衣の言いたいことがなんとなく分かった気がする。
「今度から気をつけるよ」
「それでよし。じゃあそろそろ着替えてくるね!」
「おう」
「結衣はそう言ってまたカーテンを閉めた」
(自分を卑下するのはやめようと決めていたのにな)
結衣を待つ間、俺は反省していた。そして今度こそこう思わないように決めた。
「お待たせー」
「ああ、じゃあもうそろそろ暗くなる時間だし、会計済ませて帰るか」
「そうだね!」
その後は、何事もなく会計を終わらせて、家に帰った。
聡太と有紗さんはどんなことをしたのかはわからないけど、また学校で聞けばいいか。そう思った。
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