第34話

『じゃあ気を取り直して行くわよー』

『おおー……』


 ファミレスから出た二人は元気を出して、次のところに向かった。

 ファミレスではタイミングを失敗したから、ここで決めるとメールで送ってきた。

 もちろん俺たちも気を取り直してついて行くつもりだ。


「どこに行くんだろうね」

「うーん。映画を見て、ご飯を食べて次にすることと言えば」

「買い物、かな?」

「ああ」


 その予想は見事に的中した。しかし場所が問題だった。


『な、なんで水着売り場……』

『もう直ぐ夏でしょ。選んでもらおうと思って』

『なんで俺が!』


 そんな事を有紗さんは言っていた。

それを見ていた結衣も思いついたように言ってきた。


「ついでだし、私も水着を買おっかな」

「は……? それ誰が選ぶんだ……?」

「もちろん、けいくんだよ」

「はぁ……」

 

 なんでこうなったー! 俺まで恥ずかしめを受けることになるとは。


『本当に選ぶのかよ』

『ええ。取り敢えず、選びましょ』

『はぁ。なんでこんなことに……』


 聡太もめんどくさそうにしながらも、有紗さんについて行った。

 聡太がどんな風になっているか見に行きたいところだが、こっちもそれどころじゃない。


「なぁ、本来の目的を忘れてないか?」

「いやいや、忘れてるつもりはないよ」

「じゃあ二人を追いかけなくてもいいのか?」

「でもね。やっぱり後は2人で楽しくやればいいと思うんだ」


 多分ファミレスであった事が原因なのだろう。確かに俺もそう思った。

 あんな事があったんだから、今は忘れるくらい楽しんで欲しい。

 俺がそう考えていると「それに」と結衣が続けてきた。


「聡太くんのことばかり見てたら、けいくんも嫉妬するかなって」

「嫉妬?」

「映画の時有紗ちゃんと話したんだよ。そしたら聡太くんのこと褒めたら、けいくんが嫉妬するって」

「それで今回の事で俺が嫉妬していると思ったのか?」

「う、うん。まぁ、そんな所かな」


 最後には恥ずかしくなったのか、少しモジモジしていた。

 結衣はそんな事を考えていたのか。

 それにしてもそう言う事を面と向かって、言われるとは思ってなかった。

 ある意味で結衣のことを心配させてたのかな。

 ちゃんと大丈夫だって言っとかないとな。そう思いながら俺は口を開いた。


「大丈夫だって。そんな事で嫉妬するほど束縛男じゃないし」

「そう? それなら良かったよ。——まぁでも、そういうことなので早速選んで水着を選んでもらいましょう!」

「ほ、本当にやるのか!」

「当たり前でしょ。さあさあ、選んできてね。けいくんの趣味でいいから」

「俺の趣味って……」


 まさかこんなことになるとは……。これなら来ない方が良かったのかもしれないな。絶対にいじられるし……。

 そんなことを考えていた。

 

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